研究実績の概要 |
本研究は、モルヒナン骨格を有するオレキシン1受容体(OX1R)選択的拮抗薬YNT-707において、モルヒナン骨格の部分骨格を大胆に除去した化合物を網羅的に合成するという戦略で、本化合物群がOX1Rとの結合に必要な必須構造の解明と、構造を単純化した開発候補化合物を見出すことを目的としている。 昨年度までの研究において、モルヒナン骨格を単純化することでOX1R拮抗活性をもつスピロインダノピペリジン誘導体を見出している。しかし本化合物はモルヒナン化合物群と比べて分子量は低下したものの活性の大幅な低下が問題となっていた。ここで、モルヒナン化合物群において活性に最も大きな影響を与えたのが6位アミド側鎖であることを踏まえ、本年度ではアミド側鎖の異なる誘導体を種々合成し、活性の向上を目的に研究を行った。 まず、フェニルアセトアミド構造のベンゼン環上の置換基について、メチル基やメトキシ基、ハロゲン、ニトロ基など種々検討したが、いずれも活性はほとんど見られなかった。一方で、ベンゼン環の代わりに二環式の芳香環(インドール, ナフタレン, ベンゾフラン等)を導入したところ、およそ10~40倍活性が向上した。さらに、アミドのカルボニル基と末端の芳香環の間にメチレンをもたない化合物やプロパンアミド化合物では活性が全く見られなかったことから、メチレン架橋が活性配座において重要な役割を果たしていることが示唆された。
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