研究課題/領域番号 |
20K15968
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
六車 共平 東京工業大学, 物質理工学院, JSPS特別研究員 (60753621)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ルテニウム / ペプチド / 触媒 |
研究実績の概要 |
がん治療に遷移金属触媒を利用する場合、「触媒活性OFF」の状態で標的部位に送達し、標的部位において選択的に「触媒活性ON」となる触媒が理想的である。 本研究では、がん治療への応用を指向したルテニウム触媒の活性制御機構の開発を目的とし、ペプチド性リガンドが標的分子に結合した時のみ「触媒活性ON」となるルテニウム触媒のスイッチ機構の開発をめざす。 2021年度では、前年度に得られた結果をもとに、生体内で利用可能なルテニウム触媒ーヒト血清アルブミン複合体の触媒的な機能について記載した論文を報告した(Chem. Sci. 2021, 12, 12266)。この報告では、HSAに結合しているルテニウム触媒は、触媒毒からの被毒から活性中心を守れるものの、触媒活性としては低下が見られ、触媒OFFの状態として利用できることが示唆される結果であった。そこで、標的分子に結合した時に触媒中心が露出しスイッチONとなる設計として、ペプチド性リガンドとルテニウム触媒の架橋体を合成した。10段階の反応により、ペプチド触媒架橋体の誘導体を5種類合成した。架橋体はリンカー鎖長が短くなるにつれて、ヒト血清アルブミンに対する親和性が低下する傾向を示した。また、ペプチド触媒架橋体はHSAに結合することで、触媒活性が低下したが、ペプチドが結合する標的分子の存在下において、その触媒活性が回復する結果が得られた。より詳細な検討は必要だが、遷移金属触媒のスイッチ機構を開発することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度に見出したルテニウム触媒とヒト血清アルブミン複合体の触媒的性質を利用した触媒活性制御機構の開発を目指し、ルテニウム触媒とペプチドを架橋した分子を合成した。得られた触媒ペプチドは触媒活性を示し、触媒活性スイッチ機能を有することが期待される結果が得られた。そのため、「おおむねに順調に進展している。」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
触媒活性を示す触媒ペプチドを得ることに成功したため、触媒活性スイッチ機構のより詳細な機能評価を実施する。HSAとの複合体形成能を含め、リンカー鎖長による影響も併せて評価する。また、基質適応範囲についても検討を行う予定である。細胞系でのプロドラッグ活性化試験も実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、二年目に計画していた細胞実験を実施しておらず、三年目に実施予定であるため、次年度使用額として繰り越すこととした。
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