研究課題/領域番号 |
20K15970
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
岡田 康太郎 富山大学, 薬学部, 客員助教 (70842962)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | NMR / 緩和 / ナノ粒子 / 分散液 / 比表面積 / 凝集 / 非破壊 |
研究実績の概要 |
薬物ナノ分散液は、薬物粒子をナノメートルサイズまで加工した製剤であり、薬物の溶解性・吸収性を著しく向上させるため、次世代の製剤として期待されているが、ナノ粒子の物理化学的な安定性に問題がある。本研究では、その不安定化挙動のモニタリングを目的として、時間領域NMR法によるNMR緩和の測定、およびその二次元マップ化を試みている。 本年度では、薬物ナノ分散液の処方およびプロセス検討を行った。その結果、物理化学的に不安定なモデル分散液の調製に成功し、不安定化する挙動をT2緩和時間にてモニタリングできることを明らかにした。具体的には、モデル薬物として非晶質インドメタシン(IMC)、安定化剤としてポリビニルピロリドン(PVP)を含むナノ分散液について、水を媒体とした湿式ビーズミル粉砕にて調製した。調製したナノ分散液を25℃にて6時間保存し、分散液に含まれる水のT2緩和をCPMGパルスシーケンスにて経時的に測定した。得られたT2緩和の減衰について、理論式へのフィッティングを行い、T2緩和時間を算出した。解析の結果、IMC-PVPナノ分散液のT2緩和時間は、経時的に延長し、3時間後にプラトーに達した。また、IMCナノ粒子の一次粒子径は、保存の前後で変化を示さなかった。 表面化学の分野において、分散液のT2緩和時間は、粒子の比表面積を反映することが知られている。すなわち、本研究で観測された、経時的なT2緩和時間の変化は、IMCナノ粒子の比表面積変化に由来すると考えられる。ここで、一次粒子径には変化が示されなかったことを考慮すると、観測されたT2緩和時間の変化は、IMCナノ粒子の凝集に由来すると考えられる。本手法は水分子のT2緩和を観測対象とするため、薬物や安定化剤の種類に依存しない、汎用的な凝集の評価方法となる。この成果についてはとりまとめ、2020年に欧文誌へ投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度では、最初に、不安定化を示すモデル分散液の検討を行い、次に、見いだされたモデル分散液の不安定化評価について、時間領域NMR法を用いて行う予定であった。検討の結果、保存中に薬物ナノ粒子が凝集するモデル分散液を見出すことができた。さらにその凝集について、NMR緩和の一つである、T2緩和時間にてモニタリングできることを明らかにできた。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度では、NMR緩和の二次元マップ化を行う。NMR緩和の生データは回復または減衰する曲線で示されるため、そのままでは二次元マップ化に不向きである。しかし、それらの曲線を逆ラプラス変換することで、二次元マップに適した時定数の分布曲線へ変換できる。また、分布曲線の二次元マップ化は、T1緩和およびT2緩和を用いる予定である。そのため、T1およびT2緩和の両方を取得できるパルスシーケンスを作成する。さらに、逆ラプラス変換および二次元化のプログラムを入手し、二次元化マップの作成を進める。
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