研究課題
生体内で働く酵素やタンパク質の酸化還元状態は、高次構造や生理機能の発現に大きな影響を与える。しかし、活性酸素などによってタンパク質中のシステインが過剰に酸化されると、不可逆的な機能障害が引き起こされる。そこで、本研究では、タンパク質中に存在するシステインパースルフィド(P-SSH)に着目し、その修復メカニズムを解明することを目的とした。P-SSHは、酸化されやすいものの、ジスルフィド結合を持つため、還元的に修復可能である。本研究では、チロシン脱リン酸化酵素(PTP1B)がパースルフィド化を介して可逆的に修復されることが証明された。さらに、高次脳機能に関わるカルシウム/カルモジュリン依存性タンパク質キナーゼ(CaMK)群においても、パースルフィド化によって活性阻害が起こる一方で、不可逆的な修飾に対しては可逆性が付与されることが判明した。また、生体内の酸化還元に重要な分子であるNADPHオキシダーゼ(Nox)と一酸化窒素合成酵素(NOS)が、グルタチオンポリスルフィドなどの超硫黄分子を還元すると同時に酸化・伸長することが明らかになった。この結果により、タンパク質パースルフィドを含めた超硫黄分子の化学的特性についてさらに理解を深めることができた。以上の結果から、パースルフィド化がタンパク質酸化損傷修復において重要な役割を果たしていることが示唆された。今後は、このメカニズムを利用した新たな医療・治療法の開発が期待される。
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Antioxidants
巻: 12 ページ: 868~868
10.3390/antiox12040868
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