研究課題/領域番号 |
20K15985
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
近江 純平 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 特任助教 (60846666)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | リゾリン脂質 / 免疫 / GPCR |
研究実績の概要 |
本研究では、免疫応答における複数のリゾリン脂質シグナルの機能、ならびにその使い分けを解明することを目的としている。本研究の予備検討段階において、同一のリゾリン脂質であっても、作動させる受容体タイプによって、免疫応答を亢進する場合と抑制する場合があり得ることを見出している。したがって、2020年度では本研究を遂行する上での最優先事項として、免疫組織におけるリゾリン脂質受容体の発現解析、ならびに各受容体欠損マウスの表現型の解析を行った。 (1)外来抗原としてTNP-OVAを足底部に皮下免疫したマウスの膝窩リンパ節を対象として、各種リゾリン脂質受容体の発現をIn situ hybridization法による解析した。その結果、免疫応答時のリンパ節では、リゾホスファチジン酸(LPA)に応答する受容体の内の3受容体(LPA1、LPA5、LPA6)、リゾホスファチジルセリンに応答する4受容体(LPS1、LPS2、LPS2L、LPS3)、リゾホスファチジルイノシトールに応答するGPR55が、それぞれ異なる組織内分布で発現することを見出した。 (2)発現が見られた上述の受容体について、欠損マウスの表現型解析を行ったところ、以前に得られていたLPS1、LPS2/2L、LPS3の各欠損マウスの表現型に加えて、LPA受容体欠損マウスについても新たに表現型を見出した。リンパ節内においてほぼ全ての細胞に発現が見られたLPA6の欠損マウスでは、免疫後4日の時点で、野生型マウスと比較して顕著な免疫細胞数の増加が観察された。また、極めて限局した発現パターンを示したLPA1の欠損マウスでは、免疫後7日の時点で、LPA6と同様に、免疫細胞数の増加することを見出した。一方で、GPR55の欠損マウスでは、いずれの時間点においても野生型との顕著な差は見られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度では、申請者の所属研究室の大規模移設に伴って、質量顕微鏡等の機器の利用に若干の遅れが生じたものの研究計画全体の遂行状況は概ね良好である。
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今後の研究の推進方策 |
同一リガンドに対する受容体間でも組織内分布には大きな違いが見られたことから、本結果は、「細胞間でのリゾリン脂質受容体の使い分け」を支持する重要な知見である。また、2020年度の重要な成果として、免疫応答に関与しうるリゾリン脂質受容体を絞り込むことができた。そこで、2021年度では、表現型が見られたこれらの受容体について、発現細胞の同定を進めると共に、免疫応答を亢進・抑制するメカニズムについて、細胞レベルでの詳細な解析を行う。また、各リゾリン脂質の産生酵素の欠損マウスについても表現型解析を進めると共に、質量顕微鏡を用いて免疫応答時間軸の中でのリゾリン脂質の組織内分布を明らかにすることで、「どのリゾリン脂質がいつ、どこで産生され、どのように免疫応答に関与しているのか」という疑問点について一定の解答を得ることを目指す。
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