研究課題/領域番号 |
20K15991
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
石本 尚大 金沢大学, 薬学系, 助教 (00843062)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 記憶学習 / 網羅的トランスクリプトーム解析 / 海馬歯状回特異的遺伝子発現抑制 / 神経突起伸長 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、記憶学習能力を向上させる抗酸化アミノ酸ergothioneine (ERGO)の作用機序を解明し、新規の記憶学習能力制御機構の発見につなげることである。ERGOあるいは溶媒を投与し、行動試験で記憶学習能力の向上が認められたマウスの海馬における網羅的トランスクリプトーム解析により記憶に関連する候補遺伝子を複数見出した。その候補遺伝子の発現を抑制するsiRNAを培養神経細胞に導入した際に、神経突起伸長を促進する遺伝子を見出した。さらに候補遺伝子の中で、ある膜輸送体をコードする遺伝子Xに着目した。遺伝子Xは、モノカルボン酸を輸送する膜蛋白質ファミリーに属するがその輸送基質は未だ不明であるため、遺伝子Xの過剰発現Xenopus laevis oocyteを利用して、乳酸を含む種々のモノカルボン酸の輸送を評価した。しかしながら、いずれのモノカルボン酸の輸送も確認できなかった。次年度以降は、遺伝子Xの過剰発現細胞、あるいは過剰発現Xenopus laevis oocyteを利用したメタボローム解析により輸送基質の同定に取り組む予定である。マウスにおける遺伝子Xの神経突起伸長への関与を評価するため、遺伝子Xの発現を抑制するshRNA及び緑色蛍光蛋白質を発現するAAV-shRNA-Zsgreen1を、記憶を司る海馬歯状回に注入することで脳部位特異的な遺伝子発現抑制を行い、緑色蛍光陽性の神経細胞の突起の長さを測定したところ、対照群と比較し、遺伝子Xに対するAAV-shRNA-Zsgreen1感染群で、神経突起の長さが有意に長かった。一方、初代培養神経幹細胞に対し本ウイルスを感染させ遺伝子Xの発現を抑制したところ、神経幹細胞の増殖・分化には影響を及ぼさなかった。さらに、記憶学習能力を新奇物体認識試験により評価したところ、物体認知記憶の向上傾向が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ERGOの経口投与により記憶学習能力の向上が認められたマウスの海馬における網羅的トランスクリプトーム解析により記憶に関連する候補遺伝子を複数見出した。その候補遺伝子に対するsiRNAを培養神経細胞に導入した際に、神経突起伸長が促進される遺伝子を見出した。さらに候補遺伝子の中で、ある膜輸送体をコードする遺伝子Xに着目し、以下の機能解析を行った。遺伝子X に対するAAV-shRNA-Zsgreen1を、海馬歯状回に注入することで脳部位特異的な遺伝子発現抑制を行い、緑色蛍光陽性の神経細胞の突起の長さを測定したところ、対照群と比較し、遺伝子Xに対するAAV-shRNA-Zsgreen1感染群で、神経突起の長さが有意に長く、さらに、新奇物体認識試験により記憶学習能力を評価すると、物体認知記憶の向上傾向が認められた。遺伝子Xは、モノカルボン酸の膜輸送体をコードするがその輸送基質は未だ不明であるため、遺伝子Xの過剰発現Xenopus laevis oocyteを利用して、乳酸を含む種々のモノカルボン酸の輸送を評価した。しかしながら、いずれのモノカルボン酸の輸送も確認できなかった。今後、メタボローム解析により輸送基質の同定に取り組む予定である。
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今後の研究の推進方策 |
遺伝子Xの海馬歯状回特異的発現抑制による物体認知記憶以外の空間記憶や作業記憶などへの影響も評価していく。遺伝子Xは、膜輸送体をコードするがその輸送基質は未だ不明であるため、今後、遺伝子Xの過剰発現細胞、あるいは過剰発現Xenopus laevis oocyteを利用したメタボローム解析により輸送基質の同定に取り組み、さらに、同定された輸送基質の記憶学習への関与についても解析予定である。他の候補遺伝子についても同様の解析を実施する。
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