アレルギー疾患の有病率は依然として高く、多様化するアレルゲン(抗原)によって病態の複雑化が懸念されている。マスト細胞は、抗原に応じて多様な初動応答を担う。多くの細胞と協調して炎症反応調節に寄与するが、単球・マクロファージとの関わりについてはまだ不明な点が多い。本研究では、マスト細胞と単球・マクロファージの共培養や抗原情報(親和性)の異なる抗原を用いることで、マスト細胞の抗原刺激(高親和性、低親和性)応答が単球・マクロファージに及ぼす影響を評価した。 マウス骨髄由来初代培養マスト細胞と骨髄単球を共培養することによって、単球からマクロファージへの細胞分化が亢進した。これは、マスト細胞の培養培地(成長因子を含む)のみでは観察されず、また、マスト細胞非刺激下よりも抗原刺激下の方が顕著に亢進した。また、親和性(高親和性、低親和性)の異なる抗原に対するマスト細胞応答がマクロファージ分化に及ぼす影響を解析したところ、いずれの抗原でも同様の結果が得られた。しかし、マクロファージのフェノタイプを解析すると抗原(高親和性、低親和性)によって異なる結果が得られた。さらに、IgE感作したマウスに各抗原を投与すると、抗原刺激から3日後には、抗原によって異なるフェノタイプのマクロファージが炎症局所に誘導される傾向が観られた。 本研究により、抗原親和性に応じて異なるマスト細胞応答は、単球・マクロファージの分化調節に寄与することが明らかとなった。低親和性抗原刺激を受容したマスト細胞は、単球・マクロファージを介して遅発性炎症反応を誘導する可能性がある。今後この知見をさらに発展させることで、慢性で難治性のアレルギー炎症応答のメカニズム解明の新しい一助となることが期待される。
|