研究実績の概要 |
黄色ブドウ球菌の主要な多剤排出ポンプNorAの輸送基質探索を目的として、NorAを大腸菌に発現させ、反転膜小胞を調製し、検出方法の検討およびメタボローム解析による細胞内代謝物の挙動変化を解析した。 HPLCを使用して、反転膜中に濃縮された物資の解析を行うための条件検討を行った。 NorAの既知の良い基質であるnorfloxacinを対象として、反転膜に濃縮後、抽出を行いHPLCでの検出に成功した。これによってHPLCを用いた反転膜への基質濃縮 の解析が可能であると考えられた。適切な回収条件を検討するため使用する反転膜の濃度等に関する条件検討を実施中であり、適切な条件を設定後、培養上清を 用いて反転膜内に濃縮された物質の探索を計画している。 野生株、主要多財排出ポンプ3重破壊株(norA, mdeA, mepA)、norA相補株に対するメタボローム解析によって、野生株に対して、norA相補株を含むポンプ破壊株では主にTCAサイクルを中心とした全般的な細胞内代謝物の減少が認められた。また、破壊株株では野生株、norA相補に対して一部の細胞内代謝物の増加が認められた。ポンプの破壊は生育速度に変化を引き起こさなかったが、全般的な細胞内代謝物の減少から恒常的に発現する主要な多剤排出ポンプの存在はプロトン駆動力の維持などによる細胞内恒常性安定に関与している可能性が示唆された。また、破壊株での一部の基質の増加は、これらまたは生合成過程の物質がnorAの基質の可能性がある。
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