これまで、アルギニンメチル化酵素PRMT5が心肥大に関与する機能的分子であることをこれまでに報告してきた。しかしPRMT5の生理的機能は未だ不明である。そこで今回、心臓特異的PRMT5ノックアウトマウス (KO) を作成し、その機能を解析した。 αMHC-creマウスとPRMT5flox/floxマウスを交配した。当マウスを通常環境にて飼育し観察した。さらに心臓超音波検査および組織学的検査 (HE染色) を行った。αMHC-cre/PRMT5flox/wtマウスとPRMT5flox/floxマウスを交配した結果、その生存率および性差は認められず、メンデルの法則に従って産まれてきた。当マウスを通常環境にて飼育したところ、αMHC-cre/PRMT5flox/floxマウスは生後6-10週間内で全てが死亡した。死亡直前のマウスの心臓超音波検査を行ったところ、コントロールマウスと比較して、αMHC-cre/PRMT5flox/floxマウスでは左室内径短縮率 (FS) の低下、拡張期末期系の拡大が観察された。マウスから心臓を摘出し、心重量頸骨長比およびHE染色を行った結果、心重量頸骨長比はPRMT5flox/floxマウス群と比較してαMHC-cre/PRMT5flox/floxマウス群では有意に増加していた。またHE染色の結果、個々の心筋細胞断面積に差は見られなかったが、心内腔径の著明な拡大が観察された。以上の結果より、PRMT5は心筋細胞において重要な機能的分子であり、PRMT5欠損は心拡張および左室機能低下がみられたことから、拡張型心筋症様の症状を呈していることが示唆された。
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