本研究では、心的外傷後ストレス障害の治療戦略の構築に繋げるため、情動体験時に分泌されるノルアドレナリンとグルココルチコイドを介したZnイオンの作用に着目し、情動記憶が強化される機構の解明を目指した。 海馬のZnイオンは、記憶の分子機構とされるシナプスの可塑的な変化に対して、シグナル因子であるとともにシナプス肥大の構成因子でもある。そこで、「情動体験時のノルアドレナリンやグルココルチコイドの作用を介した海馬細胞内Znイオン動態が強固な記憶の形成に重要である」という仮説の元、アドレナリンβ受容体活性化条件ではグルココルチコイドの作用により細胞内Znイオンが減少し強固な記憶を形成することを示した。
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