研究実績の概要 |
tKANSL1 mRNAはtau mRNAの3’-UTRと相補的な配列をもつ、従来のKASL1 mRNAとは異なる新奇スプライスバリアントである。本研究課題では、アルツハイマー病の発症に深く関わる樹状突起内過剰リン酸化tauの発現および蓄積において、tau mRNAの翻訳調節や細胞内分布に対するtKANSL1 mRNAの役割という観点から解析を行い、さらにtau mRNAとtKANSL1 mRNAとの相互作用を阻害する核酸医薬の探索を行ってきた。 令和2年度~3年度では、tKANSL1 mRNA発現ベクターやtau mRNA発現ベクターなどの構築およびそれらベクターを用いた株化細胞におけるtKANSL1 mRNAの解析を行った。解析の結果、tKANSL1 mRNAによってtau mRNAの翻訳活性が増加することが明らかとなり、その成果を第44回 日本分子生物学会年会で発表した。また、樹状突起内過剰リン酸化tauの発現に対して、樹状突起内CDK5 mRNAの神経刺激に応じた局所翻訳および活性化が関与することが見いだされ、その成果を海外の学術誌BBAで報告した。 令和4年度~5年度では、株化細胞を用いた解析に加えて神経細胞を用いた解析を行い、神経刺激に応じてtau mRNAの翻訳活性化と共にtKANSL1 mRNAの翻訳が活性化していることが明らかになった。さらにtau mRNAとtKANSL1 mRNAの相互作用を阻害するASOを探索し、複数のASOを組み合わせることにより阻害効果を発現できることを見出した。これらの成果は第46回 日本分子生物学会年会で発表した。また、高リン酸化tauの凝集機構に関する成果について、第45回, 47回 日本分子生物学会年会および日本薬学 第143年会, 144年会で報告した。
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