研究実績の概要 |
本年度は、白金系抗がん剤オキサリプラチンによる末梢神経障害の発現を抑制する薬剤の探索とその有効性を明らかにすることを目的に検討を行った。米国食品医薬品局(FDA) の有害事象自発報告データベース(FAERS)を用いた検討より、脂質異常症治療薬 HMG-CoA還元酵素阻害剤(スタチン系薬剤)併用がオキサリプラチン誘発末梢神経障害を抑制することを明らかにした。In vivo における薬効評価を行うためにC57BL/6J雄性マウスにオキサリプラチン(6mg/kg, 週1回, 3週)を投与し、末梢神経障害モデルを作製した。アセトンテストにおいて、オキサリプラチン投与急性期に生じる寒冷痛覚過敏はスタチン系薬剤(シンバスタチン, アトルバスタチン, ロスバスタチン, 10mg/kg, 1日1回)の2日間反復経口投与によって抑制されなかった。一方で、オキサリプラチンの累積投与量に依存し発現する機械的痛覚過敏は、スタチン系薬剤(1, 10mg/kg, 1日1回)の21日間反復経口投与によって用量依存的かつ有意に抑制された。以上より、スタチン系薬剤がオキサリプラチン誘発慢性末梢神経障害の新規治療薬となる可能性が示唆された。
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