研究課題
オキサリプラチン使用後には90%の高頻度で感覚異常が発現し、治療の長期化によって難治性のしびれや運動機能障害が生じる。現在、オキサリプラチン誘発性末梢神経障害に対する有効な治療薬は存在せず、対症療法のみにとどまっている。先行研究において、ヒト医療情報データベース解析によって、既承認薬にオキサリプラチン誘発性末梢神経障害抑制作用がある薬剤を見出した。本研究では、モデルマウスを作製し、予防・治療効果の検討と作用点の探索を試みた。マウスへのシンバスタチンの反復経口投与はオキサリプラチンによる冷痛覚過敏に無効であったが、累積投与依存的に生じる機械的痛覚過敏の発症を予防した。また、オキサリプラチンによって発症後の冷痛覚過敏にシンバスタチンは無効であったが、機械的痛覚過敏の治療作用が認められた。オキサリプラチン誘発性末梢神経障害には酸化ストレスによる細胞体障害が関与すると考えられている。グルタチオン-S-転移酵素(GST)はシンバスタチンによって発現変動することが報告されている。オキサリプラチン誘発性末梢神経障害モデルマウスにシンバスタチンとともにGST阻害剤であるエタクリン酸を投与すると、7日目に認めれられるシンバスタチンの機械的痛覚過敏抑制作用は完全に抑制された。また、同種同効薬2剤も同様に機械的痛覚過敏抑制作用がエタクリン酸によって消失した。以上から、シンバスタチンを含むHMG-CoA還元酵素阻害剤は、抗酸化作用による神経保護作用を示す、新規薬理機序によって早期臨床応用可能な抗がん剤誘発性末梢神経障害治療薬となる可能性がある。
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Biomedicine & Pharmacotherapy
巻: 148 ページ: 112744-112744
10.1016/j.biopha.2022.112744.