研究課題/領域番号 |
20K16008
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
西山 和宏 九州大学, 薬学研究院, 講師 (60810116)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | タンパク質間相互作用 / TRPC3 / NOX2 |
研究実績の概要 |
薬の標的となりうるタンパク質の中には、正常時の機能と病態時の機能が異なるものが存在する。その機能変容のメカニズムとして注目されているのがタンパク質-タンパク質間相互作用(PPI)である。申請者は、受容体作動性/脂質作動性カチオンチャネルtransient receptor potential canonical (TRPC) 3の心臓リモデリングにおける役割に着目し、TRPC3と活性酸素生成酵素(NADPH oxidase (Nox)2)との複合体形成を介した過剰な活性酸素の産生がマウス・ラットの心筋細胞萎縮や間質の線維化を形成する引き金となることを見出してきた。また、独自にスクリーニング系を構築し、TRPC3-Nox2複合体形成を強く阻害する既承認薬(イブジラスト)を同定した。本研究では、筋萎縮性疾患におけるTRPC3-Nox2複合体の役割を明らかにする。本年度では、mdxマウスに対するイブジラストの有効性の検証を行った。イブジラスト投与はmdxマウスのヒラメ筋の仮性肥大を減少させたが、野生型マウスの体重や筋重量に影響を与えなかった。イブジラストはmdxマウスの筋萎縮マーカーMuRF1発現量を低下させた。イブジラストはmdxマウスのHanging timeと筋損傷マーカー(Creatine Kinase(CK))値を改善した。以上のことから、筋萎縮性疾患においてTRPC3-Nox2複合体が関与する可能性が示された。今後は、PLAアッセイなどを用いて、実際に筋ジストロフィーでTRPC3-Nox2複合体が形成されるか確認する。さらに、TRPC3-Nox2複合体を阻害するTRPC3のC末端部分をAAVにより発現させ、有効性を確認する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、TRPC3-Nox2複合体の形成原理(複合体の立体的な結合様式や複合体が形成される条件)と筋萎縮性疾患におけるTRPC3-Nox2複合体の役割を明らかにし、「TRPC3-Nox2複合体形成阻害を主眼とした新しい筋萎縮性疾患治療」のストラテジー構築を目指している。本年度ではTRPC3-Nox2複合体を阻害するイブジラストの投与によりmdxマウスの症状の改善が認められたことから、おおむね順調に進んでいると思われる。来年度以降で、TRPC3-Nox2複合体の形成原理についても明らかにしたい。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の成果によりイブジラストの有効性を確認し、筋萎縮性疾患においてTRPC3-Nox2複合体が関与する可能性が示された。しかしながら、イブジラストはPDE4阻害剤でもある。TRPC3-Nox2複合体の関与を明らかにするために、PLAアッセイなどを用いて、実際に筋ジストロフィーでTRPC3-Nox2複合体が形成されるか確認する。さらに、TRPC3-Nox2複合体を阻害するTRPC3のC末端部分をAAVにより発現させ、有効性を確認する。一方で、イブジラスト誘導体をデザイン・合成し、TRPC3-Nox2複合体形成に対する実際の阻害効果を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度はコロナ感染症により実験の中断や、物品の欠品などがあり、次年度使用額が生じた。次年度使用額は、本研究に必要な物品や、消耗品の購入に使用する。
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