研究課題/領域番号 |
20K16012
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
森田 茜 北里大学, 薬学部, 助教 (00828072)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 血管生物学 / 血管内皮細胞 |
研究実績の概要 |
糖尿病網膜症は、強力な血管新生促進作用をもつ vascular endothelial growth factor (VEGF) が過剰に産生されることにより病的な血管新生が誘導される、著しい視覚障害や失明に至るリスクの高い疾患である。現在、糖尿病網膜症の治療に抗 VEGF 薬が用いられている。一方、VEGF は血管の恒常性維持にも重要な役割を担っていることから、抗 VEGF 薬による治療は正常な血管に対して悪影響を及ぼす可能性が指摘されている。そこで、細胞増殖・生存に関わる分子群の中で、病的な血管においてのみ特徴的に活性化している分子を in vivo において可視化し、その分子のダイナミクスを解析することができるようになれば、正常な血管には影響を及ぼさない病的な血管に対してのみ抑制作用を示す治療薬を開発するために有用であると考えた。本研究では、網膜血管が新生する新生仔期のマウスを用いて、網膜の新生血管における VEGF 受容体の下流シグナル分子について検討を行なった。昨年度、4 日齢マウスの網膜では、ERK のリン酸化が血管内皮細胞と非血管内皮細胞において亢進していること、そして血管内皮細胞においては VEGF 受容体の下流シグナル分子として作用することを明らかにした。本年度は、1) 血管内皮細胞と非血管内皮細胞において認められる ERK のリン酸化が MEK 阻害薬投与後に消失すること、2) ERK のリン酸化が認められる非血管内皮細胞は一部のアストロサイトとミクログリアであること、を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新生仔期マウス網膜の新生血管において、これまでに可視化した ERK のリン酸化が MEK 阻害薬によって消失すること、ERK のリン酸化が認められる非血管内皮細胞はアストロサイト及びミクログリアの一部であることを明らかにすることができた。このことから、おおむね順調に進展していると考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
病的網膜血管新生が生じるモデル動物を用いて本年度見出した VEGF 受容体の下流シグナル分子の活性化状態について評価を行う。また、これらの分子のダイナミクスを検討できるか否かについて、血管新生抑制薬を用いて検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症拡大により研究遂行に制限が生じたため、次年度使用額が生じた。次年度は、病的網膜血管新生が生じるモデル動物を用いて本年度見出した VEGF 受容体の下流シグナル分子の活性化状態について評価を行う。また、これらの分子のダイナミクスを検討できるか否かについて、血管新生抑制薬を用いて検証する。
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