従来、心不全は心ポンプ機能のうち駆出機能に焦点が当てられ、収縮機能の低下が病態の主体であると考えられてきた。しかし、心収縮力機能低下を伴わない拡張機能障害に基づく心不全の患者数は近年増加傾向にあり、糖尿病、高血圧、加齢などが増悪因子となる。このタイプの心不全の治療では、高血圧の是正やうっ血軽減を目的として利尿薬や血管拡張薬が用いられるが、病態の根底にある拡張機能の改善に焦点をあてた治療薬は存在しない。したがって、心筋の拡張メカニズムの詳細な解明と拡張機能をターゲットとした薬物の創出は、拡張機能障害の新たな治療戦略の開発に繋がると考えられる。
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