研究実績の概要 |
がんゲノム診断を基盤とした、患者個々のネオ抗原同定による個別化医療に資する樹状細胞ワクチンの開発には、機能性の高い樹状細胞(DC)が必要である。また樹状細胞ワクチンの作成において、単核球を採取するためにドナーから大量の採血が必要となり、さらにDCの品質の不均一性が課題となっている。そこで、細胞株由来のDCを用いて大量のエクソソームを回収する戦略を用いた。複数の細胞株由来DC分化モデルの中で, 急性骨髄性単球性白血病細胞株であるMUTZ-3はDC分化効率が最も高く, In vitroにおいてDCを作製する有益なモデルであることが知られている 。エクソソームは細胞間の情報伝達を行うために細胞から放出される直径30~150nmの膜小胞である。樹状細胞が分泌するエクソソームにはHLAクラス1およびクラス2が発現しており、単体で抗原特異的なT細胞の活性化が可能である。本研究ではIL-4およびIFN-αで分化した未熟および成熟MUTZ3由来DCとそこから放出されるExosomeの性質を評価した。作成した各DCは生細胞率に有意差はなかったものの、成熟MUTZ3-IFN-DC(M-mIFN-DC)は成熟MUTZ-3-IL-4-DC(M-mIL-4-DC)と比較して抗原提示能に関与するHLA-ABCの表面マーカーが有意に高かった。また放出されたExosomeにおいても同様の結果が認められた。さらにM-mIFN-DCから放出されたエクソソームは、優れたMART-1特異的細胞傷害性T細胞誘導能を示した。種々のサイトカインの添加によるDCへの分化は表現型や機能面に変化を与えるだけでなく、細胞外に放出されるエクソソームにおいても影響を与えることが明らかになった。リソースの観点から細胞株から放出されるエクソソームを応用することは優れた抗腫瘍効果を示す樹状細胞ワクチンの開発につながることが期待される。
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