研究実績の概要 |
本研究ではアストロサイトに発現している機能分子として、これまでにも脳傷害の病態形成に関わることが報告されているイオン透過型受容体であるTransient Receptor Potential Vanilloid 4 (TRPV4)に注目した。流体衝撃を与えることで作製した頭部外傷モデルマウスにTRPV4阻害薬であるHC-067047およびRN-1734を投与したところ、blood-brain barrier(BBB)の破綻が抑制され、脳浮腫も軽減されていた。BBB破綻の原因となる血管透過性亢進因子(matrix metalloproteinase-9, vascular endothelial growth factor-A, endothelin-1)の発現は、頭部外傷モデルマウスの脳内で増加していたが、HC-067047およびRN-1734を投与するとこれらの増加は抑制されていた。 アストロサイト培養細胞および脳血管内皮細胞におけるTRPV4の発現を確認したところ、それぞれの培養細胞でTRPV4の発現が確認されたが、特にアストロサイトにおいてTRPV4が高発現していることが確認された。流体衝撃をそれぞれの培養細胞に与えたところ、アストロサイトにおいてTRPV4の発現が増加した。また、流体衝撃を与えたアストロサイトでは、血管透過性亢進因子の発現が増加したが、HC-067047およびRN-1734を処置すると、これらの増加は抑制されていた。これらの結果より、TRPV4阻害薬はアストロサイトにおける血管透過性亢進因子の発現を抑制することで頭部外傷後のBBB破綻および脳浮腫を抑制できることが示唆された。
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