研究課題/領域番号 |
20K16020
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
加藤 文博 国立感染症研究所, ウイルス第三部, 主任研究官 (40740816)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | パラミクソウイルス / ムンプスウイルス / 脂肪酸合成経路 / 抗ウイルス薬 / スクリーニング |
研究実績の概要 |
脂肪酸合成経路は様々なウイルスにおいて複製に関与している。パラミクソウイルスの複製においても脂肪酸合成経路が関与しているかどうかを明らかにし、脂肪酸合成経路阻害剤が抗パラミクソウイルス活性を有するかどうかを明らかにすることを目的とする。 初年度は初めに、ムンプスウイルスにおいて効率的に複製を解析可能な系を構築した。AcGFPを発現する組み換えムンプスウイルスを、IFNAR1を欠損させた肺胞上皮由来株価細胞A549に感染させ、培養後蛍光顕微鏡及び画像解析ソフトウェアを用いてAcGFP輝度を定量した。その結果、ウイルス感染力価と輝度には相関関係があり、ウイルス複製を簡便に評価できることが明らかになった。次に、ムンプスウイルス複製の各過程を阻害することが既に知られている中和抗体、Mycophenolic acidおよびNocodazoleを用いて、抗ウイルス活性を評価可能かどうかを解析した。加えて、この系が96ウェルプレートフォーマットを用いて多検体解析が可能かどうかも評価するため、それぞれについて60回繰り返し試験を行い、Z' factorを算出した。結果、中和抗体、Mycophenolic acid並びにNocodazoleにおいて、0.5以上を示した。これによりウイルス感染のすべての過程において、多検体解析が可能であることが明らかになった。 同系を用いて、脂肪酸合成経路阻害剤であるMK-8245がムンプスウイルスに対し抗ウイルス活性を示すかどうかを解析した結果、IFNAR1欠損A549細胞においてはほとんど抗ウイルス活性を示さなかったが、肝臓由来株価細胞であるHuh7細胞においては弱いながらも抗ウイルス活性を示すことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の進展において、重要な検討課題であったパラミクソウイルスにおいて抗ウイルス活性を効率的に評価可能な系が予想通り構築された。またこの系を用いて、本研究で主に扱う脂肪酸合成経路阻害剤MK-8245の抗ウイルス活性を確認した。以上のことから、おおむね当該年度の目標が達成できたことから、現状において研究の進捗は研究計画通り進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度に構築した、ムンプスウイルス複製を簡便に評価可能な系を用いて、MK-8245の抗ウイルス活性機序の解明を試みる。具体的には、ウイルス学的手法と分子生物学的手法を組み合わせた方法(Time-of-addition法や、minigenomeを用いた方法)を用いる。さらには、新規抗ウイルス薬探索のため、化合物ライブラリーから抗ウイルス活性を有する化合物をスクリーニングする。これによりヒットした化合物は、同様に抗ウイルス活性機序を解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度に使用する細胞培養用の試薬等および器具類はあらかじめ準備してあったものを使用した。このことから、当該年度においては同物品の購入を見送った。次年度以降使用するための試薬および器具として令和3年購入する計画である。また、令和2年度で購入した新規ムンプスうルス薬探索のための化合物ライブラリーについて、いくつかの化合物について、更なる情報収集の必要性があったため購入を見送った。このため当初の予定より化合物ライブラリーの購入種類数が減少した。次年度には令和2年度で購入を見送った化合物について、情報収集を行い、購入する予定である。
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