研究課題/領域番号 |
20K16024
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
原 康雅 千葉大学, 大学院薬学研究院, 助教 (10824625)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 共培養 / 土壌由来放線菌 / 放線菌Nocardia属 / 微生物資源 / 培養抽出物ライブラリー |
研究実績の概要 |
本研究では、微生物の生育環境を模倣した共培養により微生物の休眠遺伝子を活性化させ、新規骨格構造および生物活性を有する天然物の取得を目指す。本年度は、1) 共培養による天然物探索資源の拡充と高度化、2) 共培養選択的に生産される新規骨格構造および生物活性を有する天然物の探索、に重点を置き、研究を行った。 微生物と微生物の共培養では、所属研究室が独自に保有する、土壌や河川、海砂から分離した放線菌 (CKK) を使用した。それら放線菌の単培養エキスがBacillus subtilisに対する抗菌活性を示さなかった放線菌780株に関して、同一環境下で分離された微生物2種の組み合わせでの共培養を行い、共培養エキス602種を得た。得られた培養エキスの抗菌活性試験を行った結果、放線菌の単培養エキスに比べて強い抗菌活性を示したCKK1702とCKK1706の組み合わせでの共培養エキスを分画対象とした。抗菌活性を指標に、共培養エキスを分離精製し、3種の既知化合物 (1-3) を単離した。3種の化合物はいずれも抗菌活性を示し、化合物2、3は共培養抽出物にのみ確認された。また、動物細胞存在下での微生物の培養 (微生物と動物細胞の共培養) では、千葉大学真菌医学研究センターより入手した病原性放線菌Nocardia属とマウスマクロファージ様細胞株J774.1を使用した。単培養エキスがJ774.1に対する細胞毒性を示さなかったNocardia属放線菌より9種選択し、微生物と動物細胞の共培養を行った。得られた培養エキスのうち、共培養特有な細胞毒性を有したNocardia uniformisとJ774.1の組み合わせを分画対象とした。共培養エキスを分離精製し、新規化合物2種を含む3種の化合物 (4-6) を単離した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、令和2-3年度の計画では、a) 土壌由来放線菌および真菌ライブラリーなどを用いた、各微生物単培養の抗微生物活性、関節リウマチ滑膜線維芽細胞毒性などの生物活性試験の実施、b) 数多くの微生物の組み合わせを同時に共培養可能な方法の構築と、生物活性を示さなかった微生物について同一環境で分離された微生物2株の組み合わせでの共培養の実施、c) 共培養選択的な生物活性を示す共培養の組み合わせの選出、を行う予定であった。 a-c)は順調に進んでいる。そのうえで、令和3年度以降に実施予定であった、共培養選択的な新規天然物や生物活性天然物の探索を進め、放線菌と放線菌の共培養より、共培養選択的な生物活性を有する天然物の単離に至った。さらに、放線菌と動物細胞の共培養より、共培養選択的な生物活性を有する新規天然物の単離に至った。 以上の結果から、研究課題はおおむね順調に進んでいると考える。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度には当初の予定であった、1) 共培養による天然物探索資源の拡充と高度化、2) 共培養選択的な新規天然物、生物活性を有する天然物の探索を進める。しかし、令和2年度の研究にて、共培養エキスより単離された、Bacillus subtilisに対して抗菌活性を有する化合物1-3と、抗菌活性を示した他の放線菌2種の組み合わせの共培養エキスをTLCで比較したところ、他の共培養エキスにも化合物1-3の産生が示唆された。そのため、B. subtilisに対する抗菌活性試験より他の生物活性試験を優先的に実施し、令和3年度の研究を進める。 1) にて、引き続き、放線菌の単培養に対する生物活性試験 (抗真菌活性試験、細胞毒性試験など) を実施し、単培養エキスでは生物活性を示さない放線菌の共培養を実施する。 2) にて、単培養と比較して強い生物活性を示した共培養エキスの分画を進め、共培養選択的な生物活性天然物や新規天然物の単離を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症により、令和2年度4-6月の緊急事態宣言下での業務命令による自宅待機となった期間を含めて研究時間等が減少し、使用する研究費が減少した。また、新型コロナウィルス感染症に関連して、研究消耗品の中で、納期が未定となり注文を断念した物も存在した。上記の理由により、令和3年度使用額が生じた。 令和3年度の助成金の使用計画として、令和2年度に引き続き、微生物の培養、生物活性試験、二次代謝産物分析、単離精製などに必要な、培地、プラスチック類、有機溶媒、樹脂担体、HPLCカラム、ガラス器具などの消耗品や、論文投稿費に使用する予定である。
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