本研究では、微生物の生育環境を模倣した共培養を実施することで、微生物の休眠遺伝子を活性化させ、これまでにない新規骨格や生物活性を有する天然物を単離し、その機能や生合成遺伝子解析などの天然物が持つ特徴の解明を実施した。微生物の生育環境を模倣した共培養として、1) 同一環境より分離した微生物と微生物の共培養と、2) 動物細胞存在下での微生物の培養 (微生物と動物細胞の共培養) の2種類の培養を行った。 1)において、抗菌活性を示した福岡県の土壌より分離した2種の微生物の組み合わせでの共培養より、抗菌活性を示す共培養下優先的に産生される既知天然物2種を単離した。また、抗真菌活性を示した滋賀県の土壌より分離したStreptomyces albidoflavus IFM 12233とS. tendae IFM 12234の組み合わせでの共培養より、共培養下優先的に産生される既知ブテノライド4種を単離した。 2)において、強い細胞死誘導作用と、単培養では観察されない明瞭なLCMSピークを見出した、マウスマクロファージ様細胞株J774.1存在下Nocardia uniformisの培養抽出物より、単培養では確認されないピークに該当する2種の新規天然物を単離した。これら2つの天然物は、J774.1に対して濃度依存的な細胞死誘導作用を示した。詳細な解析によりこの細胞死誘導作用は、鉄非依存性の脂質過酸化作用によるものと示唆された。また、LPS刺激下マウスマクロファージ様細胞株RAW264を用いたNO産生量による抗炎症活性評価を実施したところ、いずれもNO産生抑制作用を示した。その他、J774.1存在下N. arthritidisの培養より既知天然物4種を、J774.1存在下N. amamiensisの培養より既知天然物1種を単離、構造決定した。
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