ユビキチン-プロテアソームシステムは、細胞内の不要なタンパク質を選択的に分解するタンパク質分解制御機構であり、細胞の恒常性を維持するうえで重要な役割を担っている。がん細胞においてはユビキチン-プロテアソームシステムが阻害されると細胞死が誘導されるので、その阻害剤は抗がん剤シーズとしての利用が期待されている。 本研究では、ユビキチン-プロテアソームシステムによって分解されるタンパク質とルシフェラーゼの融合タンパク質を発現するレポーター遺伝子を発現しているHeLa細胞を用いて、ユビキチン-プロテアソームシステムを阻害する天然物を探索した。 真菌や放線菌をはじめとした微生物の培養エキスと海洋無脊椎動物のエキスの約15000サンプルを上記のレポーターアッセイによりスクリーニングし、ユビキチン-プロテアソームシステムによる細胞内のタンパク質分解を阻害するエキスを選抜した。タイの植物から単離したRemotididymella属の真菌のエキスがタンパク質分解阻害作用を示したので、活性成分を単離し化学構造を決定した。 単離した化合物について、ユビキチン-プロテアソームシステムのどの段階を阻害しているか確認したところ、細胞内にユビキチン化したタンパク質が蓄積していたことから、プロテアソームによるタンパク質分解を阻害する可能性が示唆された。そこで、20Sプロテアソームに対する酵素阻害試験を実施したところ、酵素活性を阻害することが明らかとなった。 本研究では、タンパク質分解活性を検出するレポーターアッセイを用いて、天然物エキスをスクリーニングし、プロテアソーム阻害作用を示す新規天然物を見出すことに成功した。
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