研究課題
本研究では、肝障害時の腎排泄型薬物の投与設計最適化に貢献する事を目的として、腎臓に発現する薬物トランスポーターOATP4C1における、薬物-胆汁酸相互作用を評価した。まず、OATP4C1における遊離型・抱合型胆汁酸と薬物の相互作用を明らかにすべく、OATP4C1安定発現系を用いて、基質取り込みに対する45種の胆汁酸の相互作用を評価した。続いて、相互作用が見られた胆汁酸について、実際に生体で相互作用を引き起こすか評価すべく、相互作用パラメーターIC50値およびKi値を算出するための濃度依存性試験を実施した。2021年度は、2020年度に引き続き実施した薬物-胆汁酸相互作用評価のための濃度依存性試験を継続し、OATP4C1と相互作用が見られた胆汁酸の相互作用パラメーターであるIC50値およびKi値を算出した。当初、肝障害モデル動物を用いた薬物動態試験によって、薬物-胆汁酸相互作用の個体レベルの評価を計画していた。しかしながら、ヒトにおける薬物-胆汁酸相互作用がどの程度起こりうるか予測するためには、実際のヒト肝疾患において評価に用いた胆汁酸45種の血中濃度がどの程度変動するか調べることが重要であると考えた。以上より、当初の実験内容を変更し、OATP4C1と相互作用を示した胆汁酸を含めて網羅的にヒト血中胆汁酸濃度を評価することとした。評価の結果、肝疾患(慢性肝炎、肝硬変、肝細胞癌)において、OATP4C1と相互作用を示した胆汁酸を含めたほぼ全ての胆汁酸の血中濃度が上昇することが明らかとなった。本研究で求めた相互作用パラメーターKi値からBile acid-drug interaction indexを算出すると、肝障害を有する患者において、実際に胆汁酸と腎排泄型薬物の相互作用が起こる可能性が示唆された。本研究成果より、肝障害時の腎排泄型薬物の投与量調節の必要性が考えられた。
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Biochimica et Biophysica Acta (BBA) - Molecular and Cell Biology of Lipids
巻: 1867 ページ: 159135~159135
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Journal of Pharmacy & Pharmaceutical Sciences
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