研究課題
レンバチニブは、進行性肝細胞がんの1次治療で承認された経口分子標的抗がん薬である。しかし、用量制限毒性となる重篤な有害事象のために投与継続が困難となる症例や、一方で、内服遵守しているのにも拘わらず治療抵抗性になる症例を経験することが多い。そこで本研究では、レンバチニブのTherapeitic drug monitoring (TDM)を活用した治療方法の個別化投与設計を目的として、レンバチニブの血中濃度と副作用・治療効果の関連について、後方視的観察研究を実施している。これまで、レンバチニブを投与され、血中濃度測定の同意を得た肝細胞がん患者28名を対象に、レンバチニブのトラフ濃度と、grade 3(CTCAE v. 5)以上の副作用、および抗腫瘍縮小効果・無増悪生存期間の関連を評価してきた。その結果、Receiver operating characteristic(ROC)解析において、grade 3以上の副作用を発現する有意なカットオフ値は、71.4 ng/mL[Area under the curve(AUC); 0.86、p < 0.05、95%信頼区間:0.71-1.00]であった。一方、responder(最大縮小率が完全奏功、部分奏功、あるいは安定であった患者)の有意なカットオフ値は、36.8 ng/mL(AUC; 0.95、p < 0.05、95%信頼区間:0.85-1.00)であった。さらに、レンバチニブ濃度が36.8-71.4 ng/mLの患者(11名)の無増悪生存期間は、36.8 ng/mL未満(4名)の患者、あるいは71.4 ng/mL以上の患者(13名)と比較して、延長する傾向を認めた [中央値13.3か月(36.8-71.4 ng/mL) vs. 3.5か月(36.8 ng/mL未満) vs. 7.8か月(71.4 ng/mL以上)]。
2: おおむね順調に進展している
肝細胞患者におけるレンバチニブのTDMを活用した個別化投与設計を目的とした本研究では、至適濃度の同定が必要となっているが、現時点で、症例は少数例ではあるものの、毒性域と治療域の有意なカットオフ値を算出することができている。また、有意なカットオフ値を用いて、高濃度(71.4 ng/mL以上)の患者、至適濃度の患者、および低濃度の患者にグループ分けして、無増悪生存期間を評価すると、至適濃度の患者の無増悪生存期間は、高濃度および低濃度の患者と比較して、延長することが示され、本至適濃度の有用性を証明することができたことが、上記区分の理由となっている。
肝細胞がん患者におけるレンバチニブの至適濃度の同定に成功したため、今後は、申請計画に沿って、レンバチニブの血中濃度の個体間変動の因子の同定を目指して、薬物動態関連因子および標的分子の遺伝子解析を実施する。
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Cancer Chemotherapy and Pharmacology
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