研究課題
レンバチニブは、進行性肝細胞がんの1次治療で承認された経口分子標的抗がん薬である。しかし、用量制限毒性となる重篤な有害事象のために投与継続が困難となる症例や、一方で、内服遵守しているのにも拘わらず治療抵抗性になる症例を経験することが多い。そこで本研究では、レンバチニブのTherapeitic drug monitoring (TDM)を活用した治療方法の個別化投与設計を目的として、レンバチニブの血中濃度と副作用・治療効果の関連について、後方視的観察研究を実施している。2020年度では、レンバチニブを投与され、血中濃度測定の同意を得た肝細胞がん患者28名を対象に、レンバチニブのトラフ濃度と、grade 3(CTCAE v. 5)以上の副作用、および抗腫瘍縮小効果・無増悪生存期間の関連を評価してきた。レンバチニブ濃度が36.8-71.4 ng/mLの患者(11名)の無増悪生存期間は、36.8 ng/mL未満(4名)の患者、あるいは71.4 ng/mL以上の患者(13名)と比較して、延長する傾向を認めた [中央値13.3か月(36.8-71.4 ng/mL) vs. 3.5か月(36.8 ng/mL未満) vs. 7.8か月(71.4 ng/mL以上)]。2021年度では、レンバチニブの血中濃度の個体間変動要因の探索として、薬物動態に関連する因子の遺伝子多型とレンバチニブの血中濃度との関連を解析した。その結果、薬物代謝酵素CYP3A4/5、薬物トランスポーターABCG2、ABCB1、ABCC2の遺伝子多型と、レンバチニブの血中濃度/投与量に有意な関連がないことが示された。2022年度では、レンバチニブのなかで発現頻度の高く用量規定毒性となる疲労感に対する漢方薬の効果をマウスモデルを用いて検討して、補中益気湯がレンバチニブの疲労感が低下することが示された。
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