研究課題/領域番号 |
20K16045
|
研究機関 | 崇城大学 |
研究代表者 |
宮内 優 崇城大学, 薬学部, 講師 (50799947)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | タンパク質間相互作用 / 薬物代謝酵素 / シトクロムP450 / UDP-グルクロン酸転移酵素 / 酸化ストレス / 活性酸素種 / 終末糖化産物受容体 / 小胞体 |
研究実績の概要 |
本研究は、これまで申請者らのグループが一貫して研究を行ってきた、薬物代謝酵素シトクロムP450 (P450, CYP)とUDP-グルクロン酸転移酵素 (UGT) の複合体形成の生理的な意義の解明を目指すものである。申請者らの先行研究において、ヒト主要UGT分子種であるUGT2B7がCYP3A4への基質の結合を阻害することで、その活性サイクル全体を低下させることが明らかになった(Miyauchi et al., Mol. Pharamacol., 2015)。その過程で、UGT2B7はCYP3A4から副次的に産生させる過酸化水素の量も低下させることが示唆された。過酸化水をは活性酸素種(ROS)の一つとして、細胞内で酸化ストレスを惹起することが知られている。本研究では、このROS産生の抑制効果に着目し、P450-UGT複合体形成の生理的な意義として検証中である。 これまでに、アフリカミドリザル由来のCOS-1細胞を用いて、効率的にCYP3A4およびUGTを共発現させるために、遺伝子改変バキュロウイルスを用いた発現系を構築し、発現条件の最適化を行った。この成果については、多くの学会で報告した。 また、酸化ストレスに関連した因子として、終末糖化産物受容体(RAGE)に着目し、そのサブクローニングも行った。RAGEは終末糖化産物をはじめ、多くの化合物をリガンドとして認識し、炎症シグナルを引き起こすとともに、NADPH-ROS経路を介して酸化ストレスにも関与することが知られている。 今後はこれらの構築したコンストラクトを用いて、CYP-UGT複合体と酸化ストレスの関連性について、細胞レベルで検証していく予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画では、培養細胞としてヒトがん細胞由来のHepG2細胞および、Huh-7細胞を使用し、プラスミドをトランスフェクションすることにより、CYP3A4およびUGT2B7の安定発現系を構築する予定だった。しかし、この方法で構築した安定発現細胞では、CYP3A4やUGT2B7の発現量が非常に低かった。そこで、これに代わる方法として、遺伝子改変バキュロウイルスに着目した。バキュロウイルスは昆虫細胞を宿主とするため、安全性が非常に高い。また、遺伝子改変により、プロモーターを哺乳動物細胞でのタンパク質の発現が可能なものに置換してある。幸いCOS-1細胞が、このウイルスに高い感受性を示したため、この発現系を用いてCYP3A4を導入する条件を検討した。これにより従来の安定発現細胞の作製法よりも、安全かつ短時間で、P450やUGTを高レベルで導入できる。 また、酸化ストレス関連因子として、RAGEにも着目し、そのサブクローニングも完了した。現在は培養細胞にRAGEを発現させ、その機能を確認している最中である。RAGEに関しては単独でも成果としてまとめることが可能である。 以上のことを考慮して、当初の研究計画とは多少の変更点はあるものの、おおむね順調に進展していると判断する。
|
今後の研究の推進方策 |
P450-UGT複合体形成によるROS産生抑制効果を検討するため、作製した組み換えバキュロウイルスを用いて、CYP3A4の単独発現細胞とCYP3A4/UGT2B7共発現細胞を作製する。培地中にCYP3A4の基質を添加し、酸化ストレスマーカーを比較する。具体的には、産生される過酸化水素の量、細胞中のスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)活性、および過酸化脂質の量を比較する。比較にはそれぞれの測定キット(過酸化水素、SOD)およびTBA法(過酸化脂質)を用いる。 P450-UGT複合体を直接検出するため、Blue-Native PAGE (BN-PAGE)による検討を行う。BN-PAGEでの検出が困難な場合は、温和な可溶化作用をもつ界面活性剤をSDSの代わりに用いることで、Native-PAGEを行う。RAGEを導入したヒト肝細胞を用いて、酸化ストレスがP450-UGT複合体に与える影響について検討する。RAGEのサブクローニングとその機能解析については、単独でも論文として発表できるように成果をまとめる。
|