研究実績の概要 |
シトクロムP450 (CYP)は酸化を担う薬物代謝酵素であり、医薬品の大部分はこのCYPにより代謝を受け、体外へ排出される。一方、CYPは副反応により、過酸化水素などの活性酸素種(ROS)を産生することが知られている。本研究では、CYPの安全装置として異種薬物代謝酵素であるUDP-グルクロン酸転移酵素(UGT)とのタンパク質間相互作用に着目し、哺乳動物細胞を用いて相互作用を解析する上で重要となる発現系の構築を行った。 研究期間を通じて、遺伝子改変バキュロウイルスを用いた哺乳動物細胞発現系 (Bac-mam system)や、ドキシサイクリンによる発現レベルのコントロールが可能なTet-One system、さらにエピソーマルベクターを用いた安定発現系の構築を行った。Bac-mam systemについては、新たな薬物代謝酵素の発現系として国際誌に報告した(Miyauchi et al, Front Pharmacol, 2022)。最終年度には、ROS産生量が特に高いことが知られているCYP2E1をエピソーマルベクターに組込み、ピューロマイシンを用いた選択により、1週間以内に安定発現細胞を作製する方法を確立した。また、Tet-One system においても導入細胞においてドキシサイクリン依存的な発現を確認し、今後シングルコロニーのクローニングを実施する予定である。 酸化ストレスに関連して終末糖化産物受容体(RAGE)に着目した研究も行い、先行研究で酸化ストレスを惹起することが知られていた糖化産物ジヒドロピラジンの細胞毒性に、RAGEが関与しないことも報告した(Miyauchi et al, J Toxicol Sci, 2021)。 以上のように、薬物代謝酵素だけでなく派生した研究でも一定の実績を残すことができた。
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