研究課題/領域番号 |
20K16046
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
山本 奈々絵 九州大学, 大学病院, 薬剤師 (70770626)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 肝移植 / 免疫抑制薬 / 個別化医療 |
研究実績の概要 |
より質の高い生体肝移植術後免疫抑制療法を目指す中で、C型肝炎ウイルスによる肝臓疾患を原疾患とする肝移植患者を対象に拒絶反応発現の 個人差に関わる候補因子として新たに見出された分子(Immunomodulatory factors of hepatitis C reactivation and rejection : IFR)に注 目した。本研究では、このIFRの移植肝における発現量や種類の差異が肝移植後の拒絶反応に何らかの影響を及ぼしていることに着目し、肝移植後拒絶反応予測のバイオマーカーとして、さらにはIFR自身の新しい免疫抑制薬開発のための標的分子としての可能性を明らかにすることを目的とし、下記の解析を行った。 1.IFR発現がNK細胞、Tregに及ぼす影響の解析:NK細胞の細胞傷害活性の測定にはNK様培養細胞株KHYG-1と白血病細胞株K562を利用したkilling assay系が確立されている。組み換えIFRを発現させたK562を用いてこのkilling assayを行う。 2.IFRによるNK細胞、CTL、Tregへの影響の細胞内シグナル解析:IFRがNK細胞、CTL、Tregに与える影響について、リン酸化タンパク抗体アレイ にてIFR存在下でのNK細胞、CTL、Treg内のリン酸化タンパクのスクリーニングを行う。 3.肝臓移植におけるIFRを介した免疫調節作用の分子メカニズムの解明:NK細胞、CTL、Treg側におけるIFRの受容体を探索するため、アフィニ ティークロマトグラフィーによりNK細胞、CTL、TregのIFRと特異的に結合するタンパク質を分離・回収する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
我々は、現在までにヒトNK様細胞株KHYG-1細胞とヒト慢性骨髄性白血病細胞株K562細胞を用いてkilling assay系を構築し、IFRによるKHYG-1の細胞傷害活性が低下していることを明らかにした。一方でIFRの作用メカニズムについては、十分な結果が得られておらず当初の計画より遅れていると言わざるを得ない。コロナウイルス感染症による緊急事態宣言発令のため、育児休暇からの復職が遅れたことも影響していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
Killing assay系を用いてIFR存在下でKHYG-1の細胞傷害活性が低下することを明らかにしたが、どのような受容体や細胞内シグナルが関与しているかについては不明である。そこで、今後はIFRによる細胞内シグナル伝達経路に焦点をあてて解析を行い、IFR の作用メカニズムについて明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響により、学会発表や研究打ち合わせなどの出張旅費を計上しなかったため次年度使用額が生じた。今年度も感染症の状況を鑑みながら、必要最低限の出張に留め、新たにメタボロミクス解析を組み込み、その消耗物品購入に使用する予定である。
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