我が国では,新規透析導入患者の抑制が重要な医療課題となっている。近年,急性腎障害 (AKI) が原因で透析導入に至る症例が慢性腎臓病症例よりも圧倒的に多いことが明らかとなり,AKI 対策が必要不可欠とされている。しかしながら,現在の AKI 治療は対症療法が中心となっており,確立された治療法は存在しない。本研究課題では,“セリンプロテアーゼの制御によるマルチターゲット作用を活用した新規 AKI 治療法を確立すること”を目的としている。 本年度は,2021年度に得た研究実績を基に「 LPS 誘発 AKI モデルに対する CM の腎機能改善メカニズムを評価する」ならびに「 LPS 以外の AKI モデル動物においても CM が AKI に対する有効性を示すのか評価する」ことを目的に検討を行った。 LPS 誘発 AKI モデルにおいて,CM の AKI 進展抑制効果および酸化ストレス抑制効果が認められたことから,2021年度に採取したサンプルを用いて,酸化ストレスに関連し,腎機能悪化の抑制に繋がる炎症マーカーについて評価した。その結果,CM は酸化ストレスのみだけでなく,用量依存的に炎症を抑制し,腎機能悪化を抑制することで AKI に対する有効性を示すことが明らかとなった。また、8週齢の雄性 C57BL/6 マウスを Control 群,AKI (腎虚血再灌流 (IR) にて AKI を誘導) 群および CM 250mg/kg 群 (IR 誘導 3日前より CM を1日2回経口投与) に分け,IR 24 時間後に血液および腎臓を採取し,腎機能 (血清クレアチニン (Scr) および血中尿素窒素 (BUN)) の評価を行った。その結果,IR によって誘導した AKI においても CM が腎機能悪化を抑制することで AKI に対する有効性を示すことが明らかとなった。
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