研究課題/領域番号 |
20K16052
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研究機関 | 獨協医科大学 |
研究代表者 |
佐々木 はづき 獨協医科大学, 医学部, 助教 (10831480)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 抗うつ薬 / CYP2D6 / 薬物動態 / 薬理遺伝学 / ベンラファキシン |
研究実績の概要 |
抗うつ薬であるVenlafaxine (以下、VEN) は、欧米では20年以上の使用経験があるが、 本邦では2015年に使用が開始されたばかりである。VENは主にCYP2D6で代謝され、白人におけるVENおよびO-desmethylvenlafaxineの薬物動態にCYP2D6が大きく影響することは先行研究で報告されているが、アジア人特 有のCYP2D6遺伝子型がVENの代謝に及ぼす影響については、限られたデータしかない。本研究では、約70名の日本人うつ病患者のVENおよびODVの定常状態の血漿中濃度に及ぼすCYP2D6*10およびCYP2D6*5の遺伝子型の影響について検討した。その結果、CYP2D6*10やCYP2D6*5を持っていると代謝率が変化することが明らかとなった(Komahashi-Sasaki, et al., TDM, in press)。さらに光学異性体に分けて細かく検討したところ、(S)-VENや(R)-VENの代謝のどちらにもCYP2D6*10やCYP2D6*5が深くかかわっていることが分かった(Sasaki et al., Basic Clin Pharmacol Toxicol 2021)。一方、各遺伝子多型のグループ内での個体差は依然として大きく、CYP2D6遺伝子多型だけでは正確な薬物動態の予測は難しく、さらなる薬物代謝に関る酵素の遺伝子多型を調べる必要性が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今までに102例の血液サンプルを収集し、venlafaxineおよびO-desmethylvenlafaxineの血漿中濃度の測定や、CYP2D6遺伝子型の同定も行っている。また、VENおよびODVの薬物動態と遺伝子多型との関連について解析を行い、その結果を論文として英文雑誌に投稿し掲載されている。
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今後の研究の推進方策 |
Venlafaxine服用中の患者からサンプルを継続的に収集し、さらにサンプル数を確保するように努める。また、遺伝子多型について、CYP2D6だけでなくCYP3A4、CYP2C19等にまで対象範囲を広げ、venlafaxineやその光学異性体、グルクロン酸抱合体などの代謝物の薬物動態との関連について、さらなる解析を行ってゆく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年9月にViennaで開催予定であったEuropean College of Neuropsychopharmacologyに参加しなかったためである。 令和3年度はCYP3A4やCYP2C19の遺伝子解析を行う。今後はvenlafaxineおよびその代謝物の薬物動態との関連について解析を行い、European College of Neuropsychopahrmacologyに参加し、結果を報告してゆく予定である。
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