研究実績の概要 |
抗うつ薬であるVenlafaxine (以下、VEN) は、欧米では20年以上の使用経験があるが、 本邦では2015年に使用が開始されたばかりである。VENは主にCYP2D6で代謝され、白人におけるVENおよびO-desmethylvenlafaxineの薬物動態にCYP2D6が大きく影響することは先行研究で報告されているが、アジア人特有のCYP2D6遺伝子型がVENの代謝に及ぼす影響については、限られたデータしかない。本研究では、約70名の日本人うつ病患者のVENおよびODVの定常状態の血漿中濃度に及ぼすCYP2D6*10およびCYP2D6*5の遺伝子型の影響について検討した。その結果、CYP2D6*10やCYP2D6*5を持っていると代謝率が変化することが明らかとなった(Komahashi-Sasaki, et al., TDM, 2021)。さらに光学異性体に分けて細かく検討したところ、(S)-VENや(R)-VENの代謝のどちらにもCYP2D6*10やCYP2D6*5が深くかかわっていることが分かった(Sasaki et al., Basic Clin Pharmacol Toxicol, 2021)。一方、各遺伝子多型のグループ内での個体差は依然として大きく、CYP2D6遺伝子多型だけでは正確な薬物動態の予測は難しく、さらなる薬物代謝に関る酵素の遺伝子多型を調べる必要性が明らかとなった。
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