有機酸血症患者において有機酸は尿中に排泄され、有機酸であるメチルマロン酸の消失機構には尿細管再吸収過程と分泌過程の存在が示唆される。本研究では、トランスポーター発現細胞及びラット腎組織を用いて、尿細管トランスポーターによるメチルマロン酸の基質認識を検討した。安定発現細胞株を用いた解析において、近位尿細管基底細胞膜に発現する有機アニオントランスポーターOAT1を介したメチルマロン酸の輸送が示された。そこで、ラット腎スライスへのメチルマロン酸の取り込みに対するOAT阻害剤の効果を検討したところ、ラット腎スライスを介した30分間のメチルマロン酸取り込みは、プロベネシドが存在することで有意に低下した。これらより、OAT1は、メチルマロン酸の血中から近位尿細管細胞内への取り込みを介してメチルマロン酸の尿細管への蓄積または尿中への分泌機構に関与する可能性が高いことが示された。メチルマロン酸血症における腎障害は近位尿細管で観察されることから、OAT1を介した輸送は腎障害発症に関与している可能性がある。一方、OAT3及びOAT4発現細胞において、メチルマロン酸の細胞内取り込みの上昇は示されなかった。また、ラット腎刷子縁膜小胞へのメチルマロン酸の取り込みは、小胞外液からナトリウムイオンを除くことで減少した。そこで、尿細管刷子縁に発現するナトリウム依存性トランスポーターであるNa+依存性ジ/トリカルボン酸トランスポーターNaDC1及びNa+依存性モノカルボン酸トランスポーターSMCT2によるメチルマロン酸の基質認識について検討した。しかし、これらの発現細胞において、メチルマロン酸の取り込み上昇は示されなかった。よってNaDC1及びSMCT2がメチルマロン酸の再吸収に関与する可能性は低いことが示された。
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