本研究では、医薬品原薬と添加物を混合し、凍結乾燥を行うことでマスキング粒子の調製を試みた。苦味を持つモデル医薬品としてアセトアミノフェン(APAP)を用いた。APAPは苦味閾値 が1.08w/v%であることが判明しており、水溶性であることから苦味マスキングの評価が容易であるため、口腔内で苦味を示す薬物モデルとして適切であると考えた。マスキング粒子を調製するための医薬品添加物 として、 CMCナノファイバーを用いた。 先行研究より、CMCの膨潤性がAPAPの苦味マスキングに有効であることが判明しており、CMCナノファイバー を用いることで親水性や安定性の上昇が見込まれ、より大きなマスキング効果を得られる可能性があったためである。 マスキング粒子はナノファイバー懸濁液にAPAPを溶解させ、減圧乾燥することで得た。調製したマスキング粒子は、口腔内における薬物溶出を模した簡易溶出試験、溶出試験、走査型電子顕微鏡(SEM)、粒度分布測定、粉末X線回折測定PXRDにより評価を行った。また、苦味マスキング効果が十分に認められた粒子は錠剤化し、溶出試験によりOD錠としての性能を評価した。 CMCナノファイバーとAPAPおよびメグルミンを水に分散させ、減圧乾燥させた固体試料においてAPAPと比較して簡易的な溶出試験において溶出性を69%抑制することができた。SEMで観察するとこの粒子の形状は薄い破片状であり、元のAPAPとは異なるものであった。通常の溶出試験では元のAPAPと同様の溶出挙動を示しており、吸収性への影響は軽微であると考えられる。しかし、OD錠とした際には溶出性が遅くなっており、F2関数は20.4となった。
|