研究課題/領域番号 |
20K16060
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研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
河合 聡人 藤田医科大学, 医学部, 講師 (20435150)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ヒト血清アルブミン / 抗菌薬 |
研究実績の概要 |
肝疾患、慢性消耗性疾患、重症感染症などの患者では血清アルブミン値が低下していることが多い。このような低アルブミン血症の患者ではヒト血清アルブミン(HSA)への結合能が高い抗菌薬の排泄が早くなり、細菌感染症の治療効果が低下すると考えられる。加えて、抗菌薬の薬物療法で一般的な多剤併用時にも、併用薬物がHSAへの結合で競合すれば、同様に治療効果の低下が懸念される。しかし、現状では抗菌薬とHSAの詳細な相互作用情報が少なく、この仮説を検証するのが難しい。本研究では、X線結晶構造解析法を用いて抗菌薬とHSAの複合体構造を決定し、抗菌薬とHSAの詳細な相互作用様式を明らかにする。そして、HSAとの結合に際し相互に影響を与えることが予測される薬物を併用して、抗菌薬の薬剤感受性試験を実施し、併用薬物の抗菌活性への影響を評価する。以上により、薬物併用時の抗菌薬の薬効変化をHSA結合様式と相関させつつ明らかにし、「併用薬物を考慮した最適な抗菌薬の投与設計」の実現に向けた基礎データの収集を図る。 本年度は、前年度に結晶が得られたロキシスロマイシン、チゲサイクリン、ドキシサイクリン、ファロペネムについて、分解能の向上を目指した共結晶化条件の最適化を行った。それぞれの薬物について、これまで経験的に分解能を向上させたことのある添加剤を加え、条件検討を行ったが、薬物の相互作用が議論可能な分解能でのデータ収集はできなかった。そこで、溶液中で結合が競合しない薬物の同定を並行して実施しながら、その薬物も含めた3者複合体での結晶化も条件に入れ検討を実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度結晶化に成功した抗菌薬との複合体結晶の分解能を改善させることができず、研究の進展が遅れてしまった。さらなる条件検討を重ねて、相互作用が議論できる分解能での構造決定を行いたい。
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今後の研究の推進方策 |
薬物の競合結合実験を実施しながら、それぞれの薬物複合体の共結晶化は、薬物の混合の順番、比を変えながら、結晶化条件の最適化を行う。また、最近SPring-8で開発された自動測定システムZooを用いることで、多数の結晶からデータを収集し、階層的クラスタリングによりそれぞれのデータの良い部分を集め、1つのデータセットとすることで、これまで困難であった結晶からのデータ収集と分解能の向上の両方に成功した例がいくつか報告された。そこで、本研究に関連する研究計画書を作成し、SPring-8の共同利用実験課題に応募、採択されたことから、今後、Zooシステムを用いた実験も実施していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度の研究途中で本研究に必須である分光光度計を購入する必要ができたため、前倒し請求を行い、機器を購入した。その際、前倒し請求時に想定していた機器と機能的に同等で且つ価格の安い機器が存在することがわかったため、そちらを購入したことで差額が生じた。本来は2022年度に使用する予定であった予算を前倒ししたため、研究計画時から予定してた実験消耗品などの物品購入に使用する。
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