研究課題/領域番号 |
20K16064
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研究機関 | 広島国際大学 |
研究代表者 |
小田 啓祐 広島国際大学, 薬学部, 講師 (60712594)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 血管内皮細胞 / ホスアプレピタント / アンスラサイクリン系抗がん剤 / 蓄積上昇 |
研究実績の概要 |
NK1受容体拮抗薬であるホスアプレピタントとアンスラサイクリン系抗がん剤の併用による静脈炎や血管痛の誘発機構について、培養血管内皮細胞HUEhT-1を用いて検討を行った。その結果、臨床に用いられるホスアプレピタント製剤Proemend中に含まれる界面活性剤や、ホスアプレピタントの活性代謝物はHUEhT-1細胞に毒性を与えない一方で、ホスアプレピタント自体が細胞毒性を示した。また、WST-1法による検討結果より、アンスラサイクリン系抗がん剤であるドキソルビシンやエピルビシンによる細胞毒性はホスアプレピタント共存により増強した。また、HUEhT-1細胞へのドキソルビシンやエピルビシンの蓄積もホスアプレピタント共存により有意に上昇した。一方、ホスアプレピタントを処置した細胞からホスアプレピタントを除去し、ドキソルビシンやエピルビシンを処置したところ、ドキソルビシンやエピルビシンの細胞毒性や細胞内蓄積は上昇しなかった。 さらに、他の抗がん剤においても同様の検討を行った結果、FEC療法などでアンスラサイクリン系抗がん剤と併用されるシクロホスファミドはHUEh-T細胞への毒性が弱く、臨床で用いられる濃度範囲ではホスアプレピタントとの相互作用は起きないと考えられた。 従って、ホスアプレピタントによる血管内皮細胞の毒性増強は、アンスラサイクリン系抗がん剤との共存による細胞内蓄積の上昇が関与していると示唆されたため、今後はアンスラサイクリン系抗がん剤の細胞内蓄積上昇メカニズムについて精査する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初から予定している明らかにすることの5つのうち、3年の期間中の1年間で2つを達成している。そのため、研究は概ね順調と言える。
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今後の研究の推進方策 |
まず、HUEhT-1細胞に発現しているトランスポーターを遺伝子発現解析により明らかにし、ホスアプレピタントによる阻害活性を検討する。 また、ホスアプレピタントとアンスラサイクリン系抗がん剤の物理学的な相互作用の可能性についてin vitroにおいて検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度はラットを用いた検討を行うことができなかった。そのため、経常した予算のうち実験動物を購入する予算が一部余った。 今年度は動物実験を進め、適切に予算を執行する。
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