これまでに、血液脳関門 (Blood Brain Barrier; BBB) を介したDHA脳移行は加齢に伴い減少し、この減少は老齢マウス(24カ月齢)のみならず中高齢マウス(12カ月齢)から生じていることを明らかにした。そして、脳血管内皮細胞に発現するDHAのトランスポーターであるMFSD2A発現量は、中高齢及び老齢マウスにおいて減少していたことから、脳微小血管におけるMFSD2A発現量の減少がDHA脳移行の低下を招いたことが示唆された。MFSD2A発現量が減少する原因として、BBB構成細胞であるペリサイトが中高齢マウスの脳内で大きく減少することに注目した。そして、脳血管内皮細胞に発現するMFSD2A発現の制御に、脳血管内皮細胞とペリサイトとのPDGFB/PDGFRβシグナルが重要であることを明らかにし、加齢に伴うペリサイトの減少がMFSD2A発現の減少を招いたことが示唆された。ペリサイトの細胞老化による変化についても追及し、老化ペリサイトはBBBバリア機能を制御する機能が減弱していることを明らかにした。老齢マウスではBBBバリア機能末梢血中のタンパク質であるフィブリノーゲンの脳内漏出が確認され、ミクログリア活性化が生じていたことから、加齢に伴うBBBバリア機能破綻が脳内炎症を惹き起こすことが示唆された。更に、ピロカルピン誘発性てんかん発作感受性についても加齢に伴い増大することを明らかにし、加齢に伴うDHA脳移行の低下やBBBバリア機能の脆弱化がてんかん発作感受性の増大に関連していることが示唆された。 本年度は、DHAの長期的な摂取(13週間)が老齢マウスのBBBバリア機能及びてんかん発作感受性に与える影響について検証した。DHAの長期的な摂取は加齢に伴うBBBバリア機能の脆弱化を防ぎ、ミクログリア活性化を抑制した。更に、てんかん発作感受性の部分的な抑制が確認された。
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