研究実績の概要 |
一般的に小児患者は,生体機能が年齢とともに大きく変化するため,各年齢における薬物動態の特徴に基づいた投与設計が必要となる.特に抗てんかん薬を代謝する薬物代謝酵素の発現は成長によって変化することが知られている.本研究は,小児てんかん患者を対象とし,血中濃度モニタリングを基盤とした抗てんかん薬の薬物動態・薬効解析を行う.特に,使用経験が少なく臨床情報が不十分な希少てんかん,4歳未満の小児てんかんに着目し,薬物治療法の最適化を目指す.さらに遺伝子解析に基づく抗てんかん薬の個別化薬物治療を確立する. 2011年から2020年までに静岡てんかん神経医療センターでレベチラセタムを服用した小児患者1,541名(0歳~16歳)から6,866ポイントの血中濃度を測定した.各患者の血清中レベチラセタム濃度投与量比を算出して体内動態に与える因子を抽出した.本剤の体内動態は,年齢によって大きく変動した.また,CKD合併患者は血中濃度が有意に上昇した.一方,酵素誘導剤(フェニトイン,フェノバルビタール,カルバマゼピン)の併用によりレベチラセタムの血中濃度は有意に低下したが,小児患者に与える影響は低かった. 2013年から2020年までにルフィナミドを服用した難治てんかん患者178名から1,531ポイントの血中濃度を解析した.体内動態に与える影響と本剤の有効濃度を調査した.ルフィナミドの血中濃度はフェニトイン,カルバマゼピン,フェノバルビタールの併用によりそぞれれ43.4%, 13.2%, 30.3%低下した.有効症例の血中濃度の中央値(四分位範囲)は,20.6 ug/mL (13.3-27.0)であった.発作型別に有効濃度を解析したが,有意差は認められなかった.しかしながら,強直発作をコントロールするためには目標濃度をより高く設定する必要がある.
|