研究実績の概要 |
骨系統疾患に対する従来の酵素補充療法や造血幹細胞移植の効果は極めて限局的である。そのため骨系統疾患への有効な治療法の開発が社会的に求められている。今年度は骨指向性を有する改変型アデノ随伴ウイルスベクターの作製を行った。これまでにアスパラギン酸(D)やグルタミン酸(E)等の酸性アミノ酸ホモペプチドの修飾は目的の化合物やタンパクの骨指向性を向上させることが知られている。まず、アデノ随伴ウイルス8型のカプシドタンパクを発現するプラスミドベクター(pAAV8-rep/cap)を用いて、過去の報告から塩基挿入が可能であると考えられているcap配列の(i)T138または(ii)N590の直後、および(iii)T138,N590両者の直後に、D8が発現するように24塩基の挿入を行った。作製したプラスミドを用いて、EGFPを発現する非カプシド改変型および3種類のカプシド改変型アデノ随伴ウイルスベクターを作製した。定量的PCRによりウイルスタイターを測定したところ、非改変型ベクターおよび改変型ベクター(i)および(ii)については、ほぼ同程度のタイターを得ることが出来た。一方で、改変型ベクター(iii)については、他のベクターと比較して1,000分の1から10,000分の1程度タイターが低い結果となった。このことから、T138およびN590両者への24塩基挿入はカプシド会合に影響を与えることが示唆された。よって以降の動物投与実験については、改変型ベクター(i)および(ii)を用いて実験を進めることとする。
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