骨系統疾患に対する従来の酵素補充療法(ERT)や造血幹細胞移植(HSCT)の効果は極めて限局的である。そのため骨系統疾患への有効な治療法の開発が社会的に求められている。これまでに研究代表者は、骨指向性ペプチド配列を挿入した複数のカプシド改変型のアデノ随伴ウイルスベクター(AAV8型)を作製した。今年度は、これらの改変型アデノ随伴ウイルスベクター(各5.0E12GC/kg)をC57BL/6J雄性マウスに静脈投与し、2週間後に採取した肝臓およびその他の臓器を用いて、各臓器におけるウイルスベクターの導入効率およびEGFP発現を評価した。マウスの凍結組織からゲノムDNAおよびmRNAを抽出し、リアルタイムPCR法によりウイルスベクターのコピー数およびEGFPのmRNA発現量の解析を行った。しかしながら、AAV8のcap配列のT138またはN590にD8の塩基配列が挿入されたカプシド改変型AAVベクター投与群では、非改変型AAVベクター投与群と比較してウイルスベクターの肝臓への導入効率およびEGFP発現は著しく低下していた。また、これらの改変型AAV8ベクターを用いてin vitroヒドロキシアパタイトアッセイを行い、リアルタイムPCR法により骨指向性の評価を行った。非カプシド改変型AAV8ベクター投与群と比較して、いずれのカプシド改変型AAV8ベクター投与群においても骨指向性の上昇は確認できなった。 以上の研究結果より、これまでに報告のある挿入サイトに酸性アミノ酸のホモ配列(D8)を導入して作製したAAV8ベクターでは骨指向性の改善は見られなかった。
|