研究実績の概要 |
創薬には膨大な労力と費用が掛かっており、1つの医薬品研究開発にかかる年月は10-18年、費用は2500億円以上にのぼるとの報告がある。従来は、ある標的分子に作用する可能性がある化合物候補を合成し、薬物動態や安全性に関する試験を行い、薬としてのポテンシャルが低い(溶解性や膜透過性が低い、または毒性があるなど)と判断された化合物を除外していく。そして残った化合物は合成して構造を最適化し、再度試験を行う。この作業を繰りし、治験薬として創り上げていく。この従来法では、大量の化合物を準備することから始まり、多くの実験を行って薬を絞り込むため、膨大な労力と費用がかかる。そこで、化合物の構造から「薬としてのポテンシャル」としての生物学的利用率(Bioavailability, BA)を予測する手法の開発にした。 初年度で、公共データベースであるChEMBLから吸収と代謝に関するin vitroの実験データを収集し、次年度はこれらのデータを公開した論文で実験条件や実験値と単位の確認を行い、データセットの質を高めた。また、モデルを構築した際に、予測精度が十分に向上しない可能性がある。BAは代謝に関する情報を持ち合わせた特性であるため、代謝の情報を組み込むことで、予測精度の向上が見込める可能性がある。その場合に備え、代謝酵素の基質性を評価した実験データの収集を行った。 最終年度では、転移学習を適用した枠組みを検討するための環境整備を実施した。BAに関係の高いと想定される代謝安定性と膜透過性のデータを収集して事前に学習を行い、その後に目的のBAでモデルを構築した。
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