研究課題/領域番号 |
20K16077
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
櫻田 巧 徳島大学, 病院, 薬剤師 (10846364)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 薬剤性腎障害 / 医療ビッグデータ / ドラッグリポジショニング |
研究実績の概要 |
シスプラチンは多くの固形がんの標準治療に用いられているが、副作用として高頻度に発現する腎障害は治療継続の妨げとなる場合があり、臨床上大きな問題となっている。一方で、シスプラチン誘発腎障害の予防に推奨される薬剤はなく、腎障害予防として水分負荷などが行われているが、患者への負担も大きく、腎障害を完全には防ぐことができないため、新しい予防法の確立が求められている。そこで本研究では、シスプラチン誘発腎障害に対する予防薬開発を目的とした。 まず、米国FDAに報告された約1100万症例の有害事象自発報告データベース (FAERS) を解析し、シスプラチン投与による有害事象の報告症例において、腎障害の報告割合を減少させる既存医薬品を抽出し、予防薬候補薬剤として脂質異常症治療薬であるフェノフィブラートを抽出した。次にHK2細胞(ヒト近位尿細管細胞)を用いて、シスプラチン誘発細胞障害に対するフェノフィブラートの影響を検討したところ、フェノフィブラート併用によりシスプラチンによる細胞生存率の低下が有意に改善された。C57BL/6雄性マウスを用いて、シスプラチン誘発腎障害モデルを作製し、各種腎機能パラメーターおよび病理学的評価によりフェノフィブラートの腎障害に対する影響を評価した結果、フェノフィブラート併用により、シスプラチン誘発腎障害を有意に抑制することが明らかになった。また、LLC細胞(ルイス肺がん細胞)、Colon26細胞(マウス結腸がん細胞)を用いて、シスプラチンの抗腫瘍効果に対するフェノフィブラートの影響を検討した結果、フェノフィブラートはシスプラチンの抗腫瘍効果を阻害しないことが示唆された。 本研究の結果より、フェノフィブラートはシスプラチン誘発腎障害の予防薬になる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
米国FDAに報告された約1100万症例の有害事象自発報告データベース (FAERS) を解析し、シスプラチン投与による有害事象の報告症例において、腎障害の報告割合を減少させる既存医薬品を抽出し、予防薬候補薬剤として脂質異常症治療薬であるフェノフィブラートを抽出した。 HK2細胞(ヒト近位尿細管細胞)を用いて、シスプラチン誘発細胞障害に対するフェノフィブラートの影響を検討したところ、フェノフィブラート併用によりシスプラチンによる細胞生存率の低下が有意に改善された。 C57BL/6雄性マウスを用いて、シスプラチン誘発腎障害モデルを作製し、各種腎機能パラメーターおよび病理学的評価によりフェノフィブラートの腎障害に対する影響を評価した結果、フェノフィブラート併用により、シスプラチン誘発腎障害を有意に抑制することが明らかになった。また、LLC細胞(ルイス肺がん細胞)、Colon26細胞(マウス結腸がん細胞)を用いて、シスプラチンの抗腫瘍効果に対するフェノフィブラートの影響を検討した結果、フェノフィブラートはシスプラチンの抗腫瘍効果を阻害しないことが示唆された。 本研究の結果より、フェノフィブラートはシスプラチン誘発腎障害の予防薬になる可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度の研究結果より、フェノフィブラートはシスプラチン誘発腎障害の予防薬になる可能性が示唆された。 2021年度以降は、フェノフィブラートのシスプラチン誘発腎障害の予防作用の機序解明、及び臨床応用の可能性を模索する。 まず、作用機序解明のため、フェノフィブラート以外のフィブラート系薬剤(ベザフィブラートなど)がフェノフィブラートと同様の効果があるかどうか、また、腎障害予防作用に必要な分子の探索を行う。 また、日本のレセプトデータベースであるJMDCを用いて、フェノフィブラートの併用によるシスプラチン誘発腎障害の予防効果を検証する。
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