研究課題
シスプラチンは多くの固形がんの標準治療に用いられているが、副作用として高頻度に発現する腎障害は治療継続の妨げとなる場合があり、臨床上大きな問題となっている。一方で、シスプラチン誘発腎障害の予防に推奨される薬剤はなく、現在臨床で行われている腎障害予防法では、腎障害を完全には防ぐことができないため、新しい予防法の確立が求められている。そこで本研究では、シスプラチン誘発腎障害に対する予防薬開発を目的とした。まず、米国FDAに報告された約1400万症例の有害事象自発報告データベース (FAERS) を解析し、シスプラチン投与による有害事象の報告症例において、腎障害の報告割合を減少させる既存医薬品を抽出し、予防薬候補薬剤として脂質異常症治療薬であるフェノフィブラートを抽出した。次にHK2細胞(ヒト近位尿細管細胞)を用いて、シスプラチン誘発細胞障害に対するフェノフィブラートの影響を検討したところ、フェノフィブラート併用によりシスプラチンによる細胞生存率の低下が有意に改善された。C57BL/6雄性マウスを用いて、シスプラチン誘発腎障害モデルを作製し、各種腎機能パラメーターおよび病理学的評価によりフェノフィブラートの腎障害に対する影響を評価した結果、フェノフィブラート併用により、シスプラチン誘発腎障害を有意に抑制することが明らかになった。2022年度は、フェノフィブラートのシスプラチン誘発腎障害の予防作用の機序解明、及び臨床応用の可能性を検討した。フェノフィブラートのシスプラチン誘発腎障害予防作用の機序解明のための検討に関しては、実験の進捗が悪く、十分な結果が得られなかった。臨床応用の可能性を検討するため、日本のレセプトデータベースであるJMDCを用いて、フェノフィブラートの併用によるシスプラチン誘発腎障害の予防効果の検証を行い、データ抽出及び解析条件の検討まで進んでいる。
3: やや遅れている
2022年度は、フェノフィブラートのシスプラチン誘発腎障害の予防作用の機序解明、及び臨床応用の可能性を検討した。フェノフィブラートのシスプラチン誘発腎障害予防作用の機序解明のための検討に関しては、新型コロナウイルス感染症蔓延の影響が大きく、実験の進捗が悪く、十分な結果が得られなかったため、やや遅れていると評価した。臨床応用の可能性を検討するため、日本のレセプトデータベースであるJMDCを用いて、フェノフィブラートの併用によるシスプラチン誘発腎障害の予防効果の検証を行い、データ抽出及び解析条件の検討まで進んでいる。
2022年度までの研究結果より、脂質異常症治療薬であるフィブラート系のうち、ベザフィブラートではシスプラチン誘発腎障害予防効果は認められなかったが、フェノフィブラートはシスプラチン誘発腎障害の予防薬になる可能性が示唆された。2023年度は、2022年度に十分に行えなかった検討を継続して行う。フェノフィブラートのシスプラチン誘発腎障害の予防作用の機序解明、及び臨床応用の可能性を検討する。 まず、作用機序解明のため、腎障害予防作用に必要な分子の探索を行う。 また、日本のレセプトデータベースであるJMDCを用いて、フェノフィブラートの併用によるシスプラチン誘発腎障害の予防効果を検証する。
2022年度は、フェノフィブラートのシスプラチン誘発腎障害の予防作用の機序解明、及び臨床応用の可能性を検討した。フェノフィブラートのシスプラチン誘発腎障害予防作用の機序解明のための検討に関しては、新型コロナ感染症蔓延の影響が大きく、実験の進捗が悪く、十分な結果が得られなかった。臨床応用の可能性を検討するため、日本のレセプトデータベースであるJMDCを用いて、フェノフィブラートの併用によるシスプラチン誘発腎障害の予防効果の検証を行い、データ抽出及び解析条件の検討まで進んでいる。2023年度は、2022年度に十分に行えなかった検討を継続して行う。予定していた作用機序解明のための実験が新型コロナウイルス感染症の影響のため次年度に実施する事になり、次年度使用額が生じた。作用機序解明のための実験に要する細胞実験のための費用として使用する予定である。
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The Oncologist
巻: 27 ページ: e554~e560
10.1093/oncolo/oyab077
Clinical and Translational Science
巻: 15 ページ: 1664~1675
10.1111/cts.13282