研究課題/領域番号 |
20K16078
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
末次 王卓 九州大学, 大学病院, 薬剤主任 (50867330)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | レテルモビル / 相互作用 / ボリコナゾール / 血液中濃度 / 母集団薬物動態解析 / タクロリムス |
研究実績の概要 |
レテルモビルは、2018年3月にサイトメガロウイルス感染症の抑制を目的に承認され、造血細胞移植後に広く使用されるようなった。 本年度は、液体クロマトグラフ・質量分析法を用いて、臨床応用が可能なレテルモビルの血中濃度を高感度に測定できる分析系を構築したものを、論文化した。 また、抗真菌薬ボリコナゾールは、薬物代謝酵素チトクロムP450(CYP)3Aの阻害作用を有するため、免疫抑制薬タクロリムスの血中濃度を上昇させるなど、両薬物間で相互作用を生じることが広く知られている。一方、レテルモビルはCYP2C19の誘導作用を有し、ボリコナゾールの血中濃度を低下させることが知られており、結果としてタクロリムスの血中濃度に影響を与える可能性がある。したがって、造血細胞移植後のタクロリムス使用時において、レテルモビルの併用がボリコナゾールの血中濃度に与える影響を調査することは重要であり、今回、母集団薬物動態解析を用いて検討した。その結果、レテルモビルの併用は、ボリコナゾールのVmax(最大反応速度)を1.72倍上昇させる方向に組み込まれ、ボリコナゾールの血中濃度(中央値)を44%低下させることが示された。なお、本研究におけるCYP2C19遺伝子多型の影響は十分に確認されなかった。 本年度の研究は、造血細胞移植後のレテルモビルとボリコナゾールの相互作用の解明につながり、タクロリムスの個別化投与に向けた影響を考慮する上で重要な結果であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
レテルモビルの血液中濃度測定系を構築し、臨床応用が可能となった。また、タクロリムス投与下において、レテルモビルの併用がボリコナゾールの血中濃度に与える影響について解析できたため。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は、引き続き造血細胞移植患者を対象として、タクロリムス個別化投与設計の発展に向けた分子生物学的指標の解明に関する研究を行っていく。薬物代謝の遺伝子多型、タクロリムス血中濃度、抗真菌薬との相互作用、有害事象や治療効果との関係について解析を行っていく計画である。また、レテルモビルの血中濃度が影響を及ぼしていると考えられる症例については、その濃度を測定していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
造血細胞移植患者を対象とした、タクロリムス個別化投与設計の発展に向けた分子生物学的指標の解明に関する研究は、年度を跨り、物品費の使用を次年度に持ち越したため。
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