研究実績の概要 |
膵がん患者の効果判定のバイオマーカーとして、好中球減少やPeripheral Blood Mononuclear Cells(PBMC)中のMyeloid derived suppressor cells(MDSC)の割合変化が化学療法の効果や生存期間に関連するかを明らかにすることを目的として検討を行う。 末梢血中のMDSCは通常は1%程度であり、非常に少ないポピュレーションを検討する必要がある。そこでMDSCを安定して分離可能な測定系の確立を目指して検討を行った。通常MDSCはPBMC中のCD11b+CD14-CD33+またはCD33+HLA-の細胞とされている。ヒトの血液検体を用いて、これらの細胞群を分離するのは難しいため、MDSC同様にCD11b+CD14-D33+である3種のヒト培養白血病細胞HL60、NB4、KG-1を用いて条件検討を行うともに、これらの細胞についてその性状を比較検討した。 令和2年度はフローサイトメトリー解析にてすべての細胞をCD11b+CD14- CD33+として分離することができた。 令和3年度はPBMCを用いて検討を行う予定であったが、コロナ禍で十分な患者数の確保ができなかったため、他がん種においても好中球減少と抗がん剤の治療効果について検討した。その結果、トリフルリジン・チピラシル塩酸塩とベバシズマブが投与された大腸がん患者で、重篤な好中球減少が発現した群では、非発現群と比較して、治療継続期間(PFS)および生存期間(OS)が有意に延長することが明らかとなった(PFS:10.9ヶ月vs. 4.5ヶ月, p= 0.005、OS:18.3ヶ月vs. 8.5ヶ月, p= 0.013)。 令和4年度は、膵癌患者を対象としてPBMCを用いて検討を行う予定であるが、膵癌患者のリクルートが不十分な場合は、大腸癌患者を対象とした同様の検討も実施していく。
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