研究課題/領域番号 |
20K16085
|
研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
平尾 卓也 国際医療福祉大学, 薬学部, 助教 (80827759)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | がん代謝 / マウスモデル / がん免疫 / 慢性骨髄性白血病 / BCR-ABL |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、血球系がん化細胞(BCR-ABL遺伝子を導入)を用いて、がん化細胞と免疫系細胞のエネルギー代謝及び免疫寛容の状態変化を同時に評価し、両者の相互作用を検討し得る「血液がんマウスモデル」を構築することである。本研究では、①免疫機能を維持した状態でがん進行度を可視化できる血液がんマウスモデルの構築、及び②本モデルを用いたがん化細胞及び免疫系細胞のエネルギー・インタラクション評価の検証に挑戦している。 本年度は、上記①血液がんマウスモデルの構築を試みた。まず、レポーター遺伝子(ルシフェラーゼ及びGFP)及びがん遺伝子(BCR-ABL)を組み込んだコンストラクトを構築した。次いで、構築したコンストラクトをマウス由来の血球系細胞株に導入し、恒常発現細胞株(レポーター遺伝子導入がん化細胞)の樹立に成功した。さらに、樹立したレポーター遺伝子導入がん化細胞の同系移植マウスモデルの作出に成功した。構築したマウスモデルにおいて、 in vivoルシフェラーゼアッセイによるがん化細胞の可視化及びがん進行度の評価、及びFACS解析によるがん進行度の評価が可能であることを確認した。また、本マウスモデルはBCR-ABL阻害剤であるイマチニブによってがんの進行が遅延する結果が得られたことから、in vivoにおける薬効評価における有用性が示唆された。 本マウスモデルは、末梢血リンパ球画分及び脾臓からGFPソーティングによりレポーター遺伝子導入がん化細胞とリンパ系免疫細胞を区別して取り出すことで、両者のエネルギー代謝状態や免疫寛容状態を同時に評価できると想定される。次年度以降、上記②がん化細胞及び免疫系細胞のエネルギー・インタラクション評価の検証を行い、本マウスモデルの有用性を立証する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、構築した血液がんマウスモデルから単離したレポーター遺伝子導入がん化細胞やリンパ系免疫細胞の細胞内エネルギー代謝状態を、メタボローム解析することで網羅的に評価する予定であった。しかし、COVID-19による県外移動制限により、協力機関での実験が困難となり、GC-TOF/MSの使用が出来なかった。さらに、COVID-19感染拡大に伴う大学の感染対策業務、授業体制の遠隔化や臨床業務対応による本研究エフォートの低下も少なからず影響がある。
|
今後の研究の推進方策 |
現状、がん化細胞と免疫系細胞のエネルギー代謝及び免疫寛容の状態変化を同時に評価し得る血液がんマウスモデルは構築できているが、その検証には至っていない。そこで、薬物治療時におけるがん進行度に応じた細胞内エネルギー代謝産物をメタボローム解析で網羅的に解析する。同時に、FACSによるがん免疫寛容の検討(Foxp3やPD-1の発現割合の検討)やELISAによるサイトカイン分泌量の検討を行うことで、がん化細胞及び免疫系細胞のエネルギー・インタラクション評価を検証する。 しかし、次年度以降もCOVID-19感染拡大に伴う県外移動制限が本研究の妨げになることが予想される。そこで、細胞内エネルギー代謝の評価を解糖系機能とミトコンドリア活性(酸化的リン酸化)に絞り、プレートリーダーを用いて研究を進める予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初は、本年度でメタボローム解析を実施するための比較的高額な消耗品や動物維持費などのランコストが掛かることを想定していた。しかし、COVID-19感染拡大による影響でCE/TOF-MSの使用ができず、継続的な動物実験が困難な状況であったため、次年度使用額が発生した。また、県外移動制限による学会発表等の自粛も原因の一端である。 次年度は、FACSやELISAなどにより、がん免疫に対する検討を行う。また、メタボローム解析と並行して、プレートリーダーを用いた細胞内エネルギー代謝の評価が必要であるため、次年度使用額はそこに充てる予定である。
|