研究課題/領域番号 |
20K16093
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
濱野 展人 東京薬科大学, 薬学部, 助教 (80708397)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | CO2産生ナノ粒子 / がん治療 / 温度応答性 / セラノスティクス |
研究実績の概要 |
セラノスティクスとは、治療と診断が一体化したシステムであり、近年、がん病巣を診断しつつ治療を行なう事が出来る次世代型高精度医療システムになり得ると期待されている。本研究では温度によりCO2が発生するナノ粒子を膵がんモデルマウスに投与し、低強度の集束超音波照射によりがん組織内でCO2内封ナノバブルを発生させ、CO2ナノバブルを超音波反射シグナルとして検出することで膵がんの超音波診断造影を試みる。更に強力集束超音波 (HIFU)を照射することで、安全かつ効率的ながん組織の焼灼を試みることで膵がんに対するセラノスティクスシステムの構築を目指す。 本年度も前年度に引き続き、がん深部組織に集積可能なCO2産生ナノ粒子の作製を目的とし、検討を進めた。ナノ粒子は、リン脂質、コレステロール、PEG脂質にて構成しエタノール溶液に溶解した。脂質を溶解したエタノール溶液と加温によりCO2を産生する炭酸水素アンモニウム (ABC)を混合することで作製した。ナノ粒子の作製には、マイクロ流体技術を利用した装置であるNanoAssemblrを用いて作製した。作製したナノ粒子にABCを利用したアンモニウムイオン濃度勾配を利用することで抗がん剤であるドキソルビシンの封入を試みた。結果、およそ90%程度の封入率を示しABC及びドキソルビシンが共に封入できていることが示唆された。今後、加温によるCO2の産生を確認するため、加温に伴うドキソルビシンの放出及び殺細胞効果に関する検討をすすめ、まずはがん治療に焦点を当て検討を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度はがん治療を指向したCO2産生ナノ粒子の作製を目的とし検討した。マイクロ流体技術を利用した装置であるNanoAssemblrを用いて作製した結果、脂質組成、混合比などを変化させることで、50-70 nm程度のナノ粒子が作製でき、CO2を産生するABCと混合し、アンモニウムイオン勾配を利用することでドキソルビシンの封入にも成功した。 一方で、加温によるCO2及びドキソルビシンの放出、殺細胞効果に関する検討などには課題が残ったため、『若干遅れている』とした。
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今後の研究の推進方策 |
次年度では、下記項目について検討を行う。1. 温度変化に伴うCO2産生に関する検討: 加温によりCO2の産生を検証するため、ドキソルビシン内封ナノ粒子からのドキソルビシン放出の有無、放出速度について評価する。 2. ドキソルビシン内封CO2産生ナノ粒子の殺細胞効果に関する検討: ドキソルビシン内封CO2産生ナノ粒子による抗腫瘍効果を評価するため、膵がん細胞を用い本ナノ粒子の殺細胞効果を検討する。本検討は加温によるドキソルビシンの放出にも関連する為、温度条件も併せて検討する。3. CO2産生ナノ粒子のがん組織への集積性に関する検討: ドキソルビシン内封CO2産生ナノ粒子のがん組織への集積性を膵がんモデルマウスを用い検討する。 4.集束超音波を併用したCO2産生ナノ粒子の有用性の評価: 2.の進捗に応じ、温度に伴うCO2産生/ドキソルビシンによる殺細胞効果が明らかとなり次第、温度上昇のトリガーとして集束超音波を用いる。加温により変性するゲルファントムを用いることで、集束超音波の最適条件及びナノ粒子を併用した場合の応答性について検討する。本検討をベースとして、in vivoにおける集束超音波とCO2産生ナノ粒子を用いた場合の最適条件を模索し、がん治療やイメージングによる診断システム (セラノスティクスシステム)の基盤構築に向けて検討を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)昨年度では主にナノ粒子の作製及び物性評価を中心に検討した。そのため、抗腫瘍効果まで至らなかったため、その分の費用が未使用額となった。 (使用計画)次年度使用計画として、膵がんモデルマウスを用いたがん組織への集積性や抗腫瘍効果、超音波などとナノ粒子を利用したイメージングに関する検討を行なう予定である。これらの研究進捗を図るために使用する予定である。
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