研究課題/領域番号 |
20K16094
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
青山 隆彦 日本大学, 薬学部, 講師 (70384633)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 定量的構造-薬物動態相関解析 / 透析 / クリアランス |
研究実績の概要 |
血液浄化療法は、血液中の病因物質を除去する治療法であり、慢性腎不全、薬物中毒をはじめ様々な病態において施行される。薬物中毒の治療において行われる血液浄化療法は、体内の薬物を除去することが目的であり、薬物が血液浄化療法によりどの程度除去されるかという情報は重要である。血液透析による薬物の除去能の指標として透析クリアランスが用いられる。本研究は、薬物の分子構造と透析クリアランスの定量的関係を調べ、薬物の透析クリアランスを透析液流量、血流量、透析膜および薬物の分子構造の関数として表す数理モデルを構築する計画である。令和3年度は、既に報告した透析クリアランス推定モデルの薬物中毒治療における応用を検討した。Pubmed, DynaMed Plus, 医学中央雑誌などを利用し、薬物中毒治療に血液透析を行った症例報告を検索した。透析条件、透析時間、血中薬物濃度測定のための採血時間が記載されたカフェイン中毒およびリチウム中毒の症例報告を対象とし、血中薬物濃度データより推定した透析クリアランスと、分子構造より透析クリアランス推定モデルを用いて推定した透析クリアランスを比較した。カフェインでは、血中薬物濃度データより推定した透析クリアランスは、分子構造より推定した場合の1.5倍であった。リチウムでは0.07倍であった。カフェインでは透析クリアランス推定モデルにより推定可能であるが、リチウムでは推定精度が低いことが明らかとなった。今後は、リチウムでの推定精度低下の要因を調べ、より推定精度が高い数理モデルを再構築する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和2年度と同様、新型コロナウィルス感染症治療による医療機関のひっ迫のため、臨床試験実施の進捗が遅れている。臨床試験実施に先行し、高速液体クロマトグラフィーによる透析液中薬物濃度測定系構築を検討している。
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今後の研究の推進方策 |
透析クリアランスの情報が得られた薬物について、分子構造から算出した分子記述子と文献より得られた透析クリアランスから、既に報告した数理モデルの予測性能評価を行った後、透析クリアランスを推定する数理モデルを再構築する。さらに、近年医療分野でも応用されている機械学習による数理モデル構築も検討する予定である。令和3年度に引き続き、今後も臨床試験実施が困難な状況が考えられる。今年度より行っている薬物中毒患者に対する血液浄化療法施行に関する症例報告などの文献データを対象とする方策に加え、新たな研究協力者の協力を仰ぎ、当初予定していた施設とは異なる施設での臨床試験の実施を計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度は令和2年度に引き続き、新型コロナウィルス感染症拡大に伴う感染防止のために研究規模が縮小されたため実験が行えず、試薬の消耗が少なかった。令和4年度は感染症対策を行ったうえで実験を行い、試薬等消耗品の購入に使用する。
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