間葉系幹細胞である脂肪幹細胞(AdSCs)は、再生医療における素材としてだけではなく、細胞医薬としての応用が進められている。AdSCsは、がん組織や炎症部位への集積性を有し、AdSCsが抗がん薬や抗炎症薬を治療部位に送達するためのキャリアとしても有用であることが示唆されている。また、AdSCs自体が組織障害を修復する作用を有していることも報告されている。このようにAdSCsは多彩な機能を有しているが、その詳細については不明な点も多い。本研究では、アドリアマイシン誘発腎障害発症マウス(ADRマウス)を用い、薬剤性腎障害に対するAdSCs投与の影響について検討を行った。また、AdSCsの障害組織への到達性に関する予備的検討も行った。 蛍光物質であるGreen Florescent PLGA nanoparticles (FL-PLGA NPs)を培養したAdSCsに取り込ませた後、そのFL-PLGA NPs負荷AdSCsをマウス尾静脈に投与し、14日後の腎臓におけるFL-PLGA NPs由来の蛍光強度を測定した。その結果、対照群の腎臓に比べ、ADRマウス群の腎臓における蛍光強度は高い傾向が観察され、腎障害の誘発はAdSCsの腎臓への集積を高める可能性が示唆された。また、AdSCs投与による腎機能マーカーへの影響について検討したところ、ADR投与によって増加した尿中アルブミンや尿中KIM-1はAdSCsの投与によって低下する傾向が観察された。以上、AdSCsは腎障害により腎臓への移行性が高まるとともに、その組織障害を軽減する効果を有する可能性が示唆された。
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