研究課題/領域番号 |
20K16101
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
山下 郁太 福岡大学, 薬学部, 助教 (90823964)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | パクリタキセル / 末梢神経障害 / Mitofusin2 |
研究実績の概要 |
タキサン系抗がん剤パクリタキセルは、高頻度でしびれや痛みといった末梢神経障害を引き起こし、がん治療を困難にしている。しかし、この末梢神経障害は発現する機序が明らかとなっていないため、対処法が見つかっていない。一方で申請者は、パクリタキセル誘発性末梢神経障害モデルラットの解析から、遺伝性末梢神経障害Charcort-Marie-Tooth病の原因遺伝子mitofusin 2(Mfn2)の発現量が低下することを発見した。このことから、Mfn2がパクリタキセルによる末梢神経障害に関与する可能性を見出した。本研究の目的は、Mfn2に着目したパクリタキセル誘発性末梢神経障害の機序解明および治療法の探索である。 本年度は、培養細胞を用いたパクリタキセル誘発性末梢神経障害様モデルの確立を行った。感覚神経への影響を模倣させるために、ラット脊髄後根神経節由来細胞×マウス神経芽細胞腫ハイブリドーマF11細胞を用いた。F11細胞はフォルスコリン存在下で神経様形態へと分化させて用いた。その結果、パクリタキセルは濃度0.01 μMから神経様突起の伸長を抑制し、濃度0.1 μM以上から細胞死を引き起こした。この神経様突起の伸長阻害は、末梢神経障害を反映する1つの指標である。このことから、パクリタキセルはF11細胞を用いたパクリタキセル誘発性末梢神経障害様モデルを確立できたと考えている。次年度以降、このモデル細胞を用いることでパクリタキセル誘発性末梢神経障害の機序解明および治療法の探索を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナウイルスの流行に伴い業務計画の大きな見直しがあったため、進捗状況はやや遅れている。 当初の予定では、モデル細胞を用いた解析とMfn2発現量が神経突起に及ぼす影響を検討する予定であった。しかし、上記の理由からモデル細胞の確立と解析サンプルの収集、測定を行うための基礎検討までしか行えていない。以降の検討を直ちに行える状況から、自己点検区分をやや遅れていると評価している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度行う予定であったモデル細胞を用いた解析とMfn2発現量が神経突起に及ぼす影響を検討する。また、次年度に予定していたパクリタキセルがMfn2発現量を変動させる経路の探索を行う。検討結果から、パクリタキセル誘発性末梢神経障害の機序解明および治療法の探索を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルスの流行に伴い業務計画の大きな見直しがあったため、進捗状況がやや遅れている。 次年度は、本年度予定していたMfn2発現量が神経突起に及ぼす影響を検証すると共に、当初予定していたパクリタキセルがMfn発現量を低下させる経路を探索する。上記の2つの課題は、同一の工程で行えるため実施に支障はないと考えている。
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