計画していた調査内容については、令和3年度の時点で概ね完了しており、令和4年度は公表作業を中心に進めてきた。これにより、SGLT-2阻害薬に関する大規模かつ画期的な臨床試験の結果が、SGLT-2阻害薬の処方を、その試験結果を外挿できる集団であるかどうかに関わらず増加させることを示唆する知見を学術論文として公表することができた。また、令和4年度の時点で投稿中であった、SGLT-2阻害薬を含む血糖降下薬全体の処方動向に関する論文についても、令和5年度に学術誌に受理された。これにより、2型糖尿病領域の薬物治療において、SGLT-2阻害薬の重要性は増し、その処方が急激に増加し続けていること、対照的に有効性に関するエビデンスが乏しかったり、安全性に課題があるとされていた薬剤については処方が減少傾向にあること、といった知見が広く共有されるものと期待される。以上より、本研究で計画していた内容については漏れなく完遂することができた。 本研究は、糖尿病領域を例とした検討ではあるものの、画期的な臨床試験の結果が実臨床の処方に与える影響とその課題を明らかにした。このことから、どのように臨床試験の結果やその情報を扱い、実臨床で活用すべきかを検討することで、医療資源の適正配分を実現したり、患者個人ごとにとっても有効かつ安全な、より適正な薬物治療を達成できるような余地が存在するものと考えられる。今後は本研究の成果をふまえて検討を進めることが期待される。
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